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2008年09月15日(月) 13時31分

「ゲリラ豪雨」対策見直し急務 三河地方の自治体東京新聞

 「まったく想定外だった」。岡崎市職員にこう嘆かせた8月末の「ゲリラ豪雨」。2人の命を奪い、市街地をあっという間にのみ込んだ豪雨のすさまじさは、三河地方の他の自治体も震撼(しんかん)させた。短時間で人々の暮らしを脅かす激しい雨にどう対処したらいいのか。台風シーズンを控え、各地で対策の見直しが迫られている。

 豪雨に襲われた8月29日未明、岡崎市災害対策本部は、市内全域の14万世帯に避難勧告を出した。ただ、市民への伝達手段は自治会代表の「総代」550人への電話と、地元のケーブルテレビとFMラジオに放送を依頼しただけ。勧告はほとんど市民に届かず、被害の回避にはつながらなかった。

 体制の不備を率直に認めた同市は、被災した地域を中心に防災情報を流す同報無線の設置と、家庭への防災ラジオ配布の検討を始めた。

 岡崎での被害は他の自治体にも衝撃を与えた。「あんな豪雨では手の打ちようがない」。西尾市防災対策室の山崎朗室長はため息を漏らす。「自力では避難できない要援護者の名簿作りを急ぎたい」。振り絞るように話した。

 広大な市域を抱える豊田市は9月末から、同報無線の試験運用を全域で始めるが、「局地的豪雨が発生した場合、地区を特定して瞬時に判断するのは難しい」。岡崎のような「想定外」の豪雨を目の当たりにし、不安は強まっている。

 防災ラジオの購入補助制度を昨年に導入済みの蒲郡市では豪雨後、200件を超える購入申し込みが殺到した。屋外のスピーカーから流れた防災情報は聞き取れなかったが、ラジオは問題なく聞こえたとの声もあった。だが、「これまでの対策は、ある程度被害の予測ができる台風が中心。今後はゲリラ豪雨も視野に入れないと」。担当者に危機感がにじんだ。

 豊橋市では、水害を受けやすい地域でのハザードマップ作りの検討が進む。8月28日の豪雨で、水があふれた内張川周辺のハザードマップがなかったためだ。防災ラジオの導入も検討しているが、「1台1万円近くするので、市民が買ってくれるかどうか」と漏らす。

 2000年9月の東海豪雨の教訓が生きたケースも。安城市では東海豪雨後、7カ所に計9万6300立方メートル分の調整池を整備。今回、東海豪雨以上の雨量を記録したにもかかわらず、床上、床下浸水の被害を受けた家屋は半分以下に減少した。豊橋市も近く、県に調整池の整備を要請する方針という。

 ただ、災害は予測がつきにくいだけに、各自治体とも予算を投じにくい事情もある。「今後、あれほど大規模な水害が再び起こるか分からないのに、多額の設備投資はしづらい」。ある自治体の担当者は本音をのぞかせた。

(中日新聞)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2008091590132948.html