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2008年09月14日(日) 04時33分

グルジア人拉致、露の強制収容300人超産経新聞

 【モスクワ=遠藤良介】グルジア紛争の勃発後、ロシア側が支配地域内で民間のグルジア人を拉致、強制収容施設に連行して労働を課していた疑いがある問題で、その被害者は中高年を中心に300人以上にのぼることが、産経新聞の入手したグルジア政府の内部文書で明らかになった。グルジア政府は先に「民族的迫害の停止」を求める保全措置を国際司法裁判所(オランダ・ハーグ)に申し立てており、この文書も証拠書類として提出された。ロシア国防省は13日現在、本紙の取材に応じていない。
 この文書はグルジア内務省が今月5日時点で、ロシア軍支配地域内での被害状況をとりまとめたもの。それによると、強制収容施設は8月12日以降、南オセチア自治州の州都、ツヒンバリにある独立派勢力の「内務省」内に数週間にわたって設けられた。文書は「部隊(ロシア軍とオセット人独立派民兵)は中高年の人々を選んで捕らえ、人質として特別の『強制収容所』に拘束した。およそ300人以上の収容者は現地治安当局や民兵に虐待された」などと記している。
 また、グルジア内務省が偵察行動の中で入手した強制収容施設とされる写真では、鉄さくと鉄条網で厳重に仕切られた敷地内の建物脇で、数十人の男性がひしめいているのが見られる。
 産経新聞がグルジア人の元収容者や避難民から得た証言によると、収容者らは終日、住宅のがれき処理や市街清掃、グルジア人の遺体処理といった労働を強制された。また、施設内では収容者への暴力が横行し、食事も著しく制限されていた。グルジア政府筋は「同様の事実を私たちも把握している」としている。収容者はロシアとの「捕虜交換」でほぼ解放された。
 グルジア政府の文書によると、南オセチアの紛争地帯では、ロシア軍と民兵がグルジア人の住む21の村落で住居を破壊するなど「民族浄化」を敢行。さらに、ロシア側は南オセチアにとどまらず、中部ゴリ地方などまで「緩衝地帯」と称して支配地域を拡大した。文書は「ロシア軍と独立派民兵による攻撃、略奪などによって計12万5810人が家を追われた」「(9月5日時点で)4万7534人が帰還できずにいる」としている。
 グルジアは8月、ロシア軍などによる民族的迫害を停止するための保全措置を国際司法裁判所に申し立て、今月8日から10日の日程でグルジアとロシア双方からの意見聴取が行われた。

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