記事登録
2008年09月14日(日) 02時30分

<経産省>ガス・石油会社も新エネ調達義務化 新法提出へ毎日新聞

 経済産業省は、ガス会社や石油会社に、天然ガスや石油に代わるバイオガスやバイオ燃料など新エネルギーの調達を義務づける方針を固めた。来年の通常国会への法案提出を目指す。地球温暖化や資源価格高騰に対応するため、新エネルギー政策を抜本的に見直し、二酸化炭素(CO2)排出の主因である石油など化石燃料からの脱却に向けた取り組みを加速する。

 新エネルギー利用促進を目指す取り組みは、03年に施行した新エネルギー利用特別措置(RPS)法がある。同法は、電力会社に風力や太陽光などの新エネルギー利用を義務付け、14年度には国内の総発電量の1.63%に当たる160億キロワット時の利用を目標に据えている。だが、国内エネルギー消費量の6割は、石油やガスが占めており、新エネルギーの利用促進には石油やガス業界への拡大が不可欠と判断、一定量の使用を義務付けることにした。

 ただ、家畜のふん尿や生ごみなどのバイオマス(生物由来の有機体)から発生するバイオガスや、トウモロコシなど食料を主原料とするバイオ燃料の国内生産は極めて少ない。石油連盟は昨年4月からバイオガソリンの販売を始めたが、すべてブラジルからの輸入に頼る。穀物価格の高騰を背景に、食料を原料とするバイオ燃料には批判が高まっているほか、バイオガスもコスト面などで課題は多く、非食料を原料とするバイオ燃料の開発などが課題となる。

 政府は今年7月、地球温暖化対策を盛り込んだ「低炭素社会づくり行動計画」を策定した。バイオ燃料など二酸化炭素の排出を抑える新エネルギーへの転換は、低炭素社会実現に向けた大きな柱と位置付けている。経産省は、利用義務化などを盛り込んだ総合的な新エネルギー利用促進法を創設する方針だ。【坂本昌信】

 【ことば】新エネルギー 再生可能エネルギーのうち、コスト面などの問題があり、普及に向けた支援が必要なもの。太陽光や風力発電、家畜のふん尿や廃材などのバイオマス(生物由来の有機体)による発電や燃料などを指す。石油や石炭など化石燃料の代替燃料となるほか、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量の抑制に効果がある。

 ◇コスト削減など普及のカギに

 経済産業省は、ガスや石油会社に一定のバイオガスやバイオ燃料の調達を義務づける方針を固め、新エネルギー政策を本格化させる。70年代の石油ショック後のエネルギー多様化により、石油依存度は低下しているが、石炭や天然ガスを含む化石燃料は依然として全体の8割を超える。地球温暖化防止のためには、二酸化炭素を排出する化石燃料からの脱却が課題になる。

 欧州諸国では、脱化石燃料を目指す取り組みが本格化している。国際エネルギー機関(IEA)によると、太陽光などの新エネルギーがエネルギー供給に占める割合は、日本は90年、05年とも1.7%であるのに対し、ドイツは90年の1.1%から05年には4.1%に拡大した。太陽光発電は、かつて日本が首位だったが、現在はドイツがトップだ。

 電力会社に新エネルギーの利用を義務づけた新エネルギー利用特別措置(RPS)法では、電力会社の反発もあり、14年度の達成目標が全体の1.63%と低水準にとどまった。新たに義務を課すガスや石油会社も、高い目標設定には抵抗が予想される。

 政府はバイオ燃料などの新エネルギーの開発に力を入れており、早急なコスト削減などが普及のカギを握る。また、新エネルギー導入に伴うコスト上昇分を電力やガス料金に転嫁するなど、家庭負担の増加も検討課題に上る可能性もありそうだ。【平地修】

 【ことば】新エネルギー利用特別措置(RPS)法 電力会社に、販売電力量に応じて一定量の新エネルギーの調達を義務付ける法律。石油依存度の引き下げや、温室効果ガスの排出抑制を目的に03年4月に施行された。対象はバイオマス、風力、太陽光、地熱など。4年ごとに義務量を見直し、現在は14年度までの義務量が設定されている。

【関連ニュース】
新経済成長戦略:原油高に対応…経産省が改定案
経産省:ファンド活用促進へ協議会発足
パロマ:湯沸かし器回収漏れ485台に 経産省発表
概算要求:経産省1兆6348億 原油・原材料高騰に対応
経産省概算要求:新エネルギーに1300億円

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080914-00000008-mai-bus_all