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2008年09月14日(日) 22時26分

パラリンピック 円盤投げ銅の60歳、妻に「次も目指す」毎日新聞

 【北京・石丸整】「女房に残念だったと報告します」。14日の北京パラリンピックの陸上男子円盤投げで銅メダルを獲得した大井利江選手(60)=岩手県洋野町。自己記録を更新し、04年アテネ大会の銀に続くメダルだが、金を目指していただけに悔しさをにじませる。この10年、週に4日の練習に付き合ってくれた妻須恵子さん(66)から「いい結果を出さないと意味ないよ」と送り出された今大会。60歳のアスリートは早くも「次」を目指す。

 元漁師だ。北太平洋ミッドウェー沖でマグロ漁をしていた89年、甲板での作業中につり上げていた約20キロのかごが落ちてきた。首の骨を折り下半身の感覚がなくなって車椅子生活に。妻と子供3人を抱え、「落ち込んではいられない」とリハビリのためプールに通った。

 障害を持つ人が他にもいることを知り、障害者の水泳大会に参加するようになった。99年に友人に連れられて陸上の大会に行き、大会役員に「円盤投げをやってみないか」と誘われた。元高校球児で、その恵まれた体格に目を付けられた。投げるのは「難しいけどやりがいがあった」と練習を重ねてこつを覚え、初の国際大会出場となった02年アジアオセアニアスポーツ大会で優勝した。

 練習を支えたのは、自身も左脚に障害がある須恵子さんだ。中学2年の冬に転んで骨折。2〜3年後に歩けるようになった時には骨がねじれた状態でつながっていた。

 大井選手は週4日、午前8時半に自宅近くの運動公園で練習を始める。固定した車椅子から重さ1キロの円盤を投げる。左脚を引きずり半歩ずつしか進めない須恵子さんが拾い、両手で抱えて大井選手に渡す。午前10時まで50回ほど投げ、須恵子さんが拾い続ける。

 大会開幕前日。北京郊外の競技場でも円盤を拾う須恵子さんの姿があった。20代の選手らと競っての銅メダル。大井選手は「女房に楽をさせてやるかと思ったけど、金が取れなかったから4年後も目指す」。二人三脚は当分続く。

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