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2008年09月14日(日) 22時38分

【事故米不正転売】焼酎の回収対象100万本 進まぬ全容解明産経新聞

 事故米の不正転売は、次々に新たな流通先が発覚し、被害が拡大を続けている。汚染米を原料とした可能性があるとして自主回収対象となった食品は、焼酎だけでも100万本を超えた。消費者の不安は大きくなるばかりだが、複雑な流通経路の解明にはまだ時間がかかりそうだ。

■回収はかどらず

 「消費者に一度販売した焼酎の回収はなかなか進まない」。事故米を仕入れた焼酎メーカー「抜群酒造」(鹿児島県)の担当者は怒りを込めて話す。

 回収対象が524本の同社でも難しいのに、大口のアサヒビールでは65万本、西酒造30万本に上る。焼酎だけでなく、アラレやヨモギ餅、給食などにも使われたことが発覚し、被害は甚大になった。

 当初、三笠フーズの不正転売は、有機リン酸系農薬メタミドホスやカビ毒アフラトキシンで汚染された299トンしか確認されていなかった。京都の保育園や119以上の医療・福祉施設などで、給食などとして提供された疑いがあるのは、このコメの一部。

 しかし、それだけではなかった。残留農薬アセタミプリドで汚染された米が、商社経由で三笠フーズに販売され、アサヒビールなどで使われた可能性も発覚。名古屋市の接着剤製造業者「浅井」など2社の不正まで判明した。

■複雑な経路

 ほかにも三笠フーズの汚染米約970トンの流通先が全く明らかになっていない。汚染米問題では、すでに熊本県警が刑事告発を受けており、今後、刑事事件に発展する可能性が高いが、これだけ拡大した不正転売を、どこまで解明できるかは未知数だ。

 農水省の調査も難航している。仲介業者が多数介在し、伝票上だけの取引も多い複雑な販売ルート。出荷記録が時系列に並んでいないなどずさんな三笠フードの台帳。調査を阻む要因は数多いが、不正販売の全体像を把握しているのが、九州事業所の前所長1人だけという実態も、調査を遅らせている。ある幹部は「大量の伝票で事実確認しようにも、1人しか分からないんだから…」とこぼす。

■公開も進まず

 混乱に拍車をかけているのが、農水省の対応だ。

 太田誠一農水相は「人体に影響はないから、じたばた騒いでいない」と発言して批判を浴びた。業者からの訴訟を懸念する農水省は、同意を得られた業者しか汚染米の流通先を公開しないため、消費者は未だに具体的に何に気をつけていいのか分からない状態に置かれている。

 今後、第三者を加えた調査委員会を設置し、監視体制を検証することも検討しているが、同省への批判は当面、収まりそうもない。

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