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2008年09月13日(土) 08時00分

にぎわい“走る”副都心 開業3カ月、トラブルも乗客数も予想超える産経新聞

 東京メトロ副都心線が開業して14日で3カ月。運行トラブルで波乱の幕開けだったが、新駅周辺の街に活気をもたらすなど開業効果も上がっている。西武、東武両線が乗り入れ、埼玉方面から新宿、渋谷へ向かうのに池袋で乗り換える手間が省けるため利用者の流れに変化もみられる。(中島明宏、黒田悠希)

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 ◆沿線開発で活気

 高さ240メートルのサンシャイン60ビルを間近に見上げながら穏やかな下町の風情が残る豊島区の雑司が谷駅周辺。地元商店街、鬼子母神通り商店睦会の建持直樹会長(50)は、最近カメラを持って歩く人が増えたのに気付いた。見知らぬ人に道を聞かれることも。都電がゆっくり走る“昭和の下町”を散策しようと訪れる人が増えた。建持会長は「自分たちの街の良さに初めて気付いた」と話す。

 月刊誌「東京人」(都市出版)の田中紀子副編集長(36)も「街歩きが楽しくなった」。西早稲田や北参道も含め、「山手線の内側にありながら交通面で不便だった地域が、駅ができて商店街も活気が出てきた」と分析する。

 また、沿線は都心近くに位置しながら開発の余地を残していた地域として注目されている。新宿・歌舞伎町に近い東新宿駅周辺ではビジネスホテルが次々とオープンしている。

 ◆渋谷にも危機感

 田中さんが「新宿の中心が動いたような感覚。目に見えて人の流れが変わった」と注目するのは新宿三丁目駅。地下通路が伊勢丹新宿本店、新宿高島屋に直結、人の流れが絶えない。高島屋は「埼玉方面から来店が確実に増えた。クレジットカードでの購入者で10%増」(広報・IR室)と胸を張る。

 一方、「乗客が素通りする」と心配された池袋。東武百貨店は「影響はない」(池袋本店総務部)。西武百貨店も利用客数は変わらないとするが「長い目で見れば地域間競争は激しくなる」(池袋本店販売促進部)と新宿を意識し全館改装工事を行っており、若者向けブランドを強化する。

 池袋以北からのアクセスが格段に向上した渋谷にとっても、「素通りの懸念」は他人事ではない。平成24年、副都心線と東急東横線が乗り入れる。渋谷道玄坂商店街振興組合は「(神奈川方面からの乗客が)新宿に行ってしまう可能性もある。今回のデータを検証したい」という。

 ◆山手線の混雑は?

 副都心線の目的はJR山手線の混雑緩和だが、JR東日本の清野智社長は2日の記者会見で「ものすごく緩和されたとは思っていない」と述べた。同社は当初、池袋−渋谷間で1日9万人の乗客が減ると予想していたが、6、7月の推計値は1日6、7万人減にすぎなかった。うち定期券利用者は約1万5000人と見込む。

 混雑緩和は乗客減少による収入減と裏表でもある。JRは山手線と並行する貨物線も活用し対策に力を入れてきた。埼京線は大崎まで延伸。池袋、渋谷などを経由して埼玉方面と横浜方面を結ぶ「湘南新宿ライン」を導入した。

 副都心線は順調な滑り出しだ。東京メトロは、池袋−渋谷間の乗客を1日15万人と予測。7月はそれを上回る約19万1000人だったという。このうち定期券利用者は約3割。他路線並みの5割に届くか。10月ごろの買い替え時期を控え、同社は「徐々に増えていく」(広報部)と期待している。

 ◆3線乗り入れで混乱

 開業直後、相次いだ運行トラブル。特に小竹向原駅では東京メトロ有楽町線、東武東上線、西武池袋線と3線も乗り入れる複雑さが混乱に拍車をかけた。同社は開業2週間で駅設備や人員配置の見直しを迫られた。小竹向原駅が副都心線の今後を握っている。

 同駅は1、2番線双方から副都心線渋谷方面、有楽町線新木場方面の列車が出発する。ホームの電光掲示板は、下段に運行情報が流れると、次列車しか表示されず、座るため1本見送る利用者には1、2番線どちらで待てばよいか分からなかった。そこで、電光掲示板の表示を2列から3列に改良した。

 また、西武の車両は同駅で東京メトロの運転士と交代する。副都心線はワンマン運転に切り替えが必要なうえ、不慣れな他社車両の習熟不足も露呈。トラブル後、一時、運転士経験のある上役が駅で切り替えに立ち会った。

 東京メトロの瀬ノ上清二運転課長は「期待が大きかったのに、大変迷惑をかけてしまった」と話している。

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