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2008年09月13日(土) 18時47分

【衝撃事件の核心】千葉港バラバラ女性の奇妙な同棲生活 飛び交う“風評”産経新聞

 謎だらけの私生活だ。千葉市中央区の千葉港で見つかったバラバラ遺体事件で、被害者の無職、金子真由美さん=当時(30)=は行方不明になる直前まで、市内のアパートで見知らぬ男性ら3人と奇妙な“同棲生活”を続けていた。結婚歴もない独身女性がなぜ? 生活の糧は? 捜査幹部も「摩訶(まか)不思議」と漏らすほどの暮らしぶり。実家から行方をくらませて2年、バラバラに切断されて重しをつけられ港に沈められるという凄惨な事件の被害者になってしまった。一体何が起きたのだろうか。(伊藤鉄平、中村真由子、西岡瑞穂)

 ■マネキンかと思った…ナタで切断される?

 事件の発覚は2カ月ほど前にさかのぼる。
 7月11日、千葉港で釣りをしていた男性(35)が、停泊していたタンカーと岸壁の間に浮かぶマネキンのようなものを見つけた。首や腕ははずれているようだった。
 「何か死体のようなものが、船と岸壁の間に浮いている!」
 男性から通報を受けた千葉県警の捜査員が引き上げると、それは無惨にも頭部や四肢を切断された本物の女性の胴体だった。
 胴体に着衣はなく、胴回りにはロープが結びつけられ、その先には重しが付けられていた。
 3日後には、胴体の発見場所から約300メートル離れた海中で県警のダイバーが、ロープで1つに巻かれ、胴体と同じく重しを付けられた両脚を発見。切断面の形状から、遺体は死後、ナタのような重量のある刃物で切られた可能性が高いことなどが判明した。
 しかし、頭部と両腕は現在に至るまで見つかっていない。歯形や指紋などの決め手に欠くことから、身元の割り出しは難航した。
 「最近、姿が見えない」という知人からの情報提供をもとに、DNA鑑定を行い、遺体が金子さんと判明したのは9月に入ってのことだった。
 そして身元判明後、捜査員らは、不可思議としか言いようのない金子さんの生活に、さらに悩まされることになる。

 ■中年男性3人と生活 うち2人とは「妙な関係」

 千葉市稲毛区の閑静な住宅街にある2階建てアパート。家賃月約5万円の3DKの一室で、金子さんは男性3人と“同棲”をしていた。
 しかも、男性らは50〜60代。いずれも派遣労働で日銭を稼ぐなど、若い女性にしてみれば、お世辞にも魅力的な条件の相手とは言い難い。
 それだけでも意外なのに、さらに捜査員を驚かせたのは金子さんと同居男性らとの関係だ。
 3人のうち「知人」といえるのは1人だけで、ほかの2人は部屋を分け合うだけの「知り合いともいえない関係」(捜査幹部)だというのだ。
 さらに、この部屋に出入りする別の複数の男性の姿が周辺住民によってたびたび目撃されている。
 「摩訶不思議−」
 ベテラン捜査員にそう言わしめるほど、金子さんの生活実態は把握しにくいという。

 ■異様な生活空間

 取材でアパートに足を運んでみると、嫌でも散乱するガラクタが目に入る。
 玄関先には土木作業に使うヘルメットや、泥まみれになった男性用のゴム長靴…。周囲には空き缶を詰めたゴミ袋や、解体した電化製品が積まれていた。
 「(部屋の男性らは)よれっとしたシャツを着て、部屋の前の路上で集めてきた空き缶をつぶしたり、廃品を解体したりしていた」
 「4年前に私が引っ越してきたときには(金子さんの)部屋のドアに『解体工・大工募集』といった内容の張り紙があり、そういう関係の事務所だと思っていた」
 近所の人の話からも、とても結婚歴のない独身女性が好む環境とは思えないのだ。
 捜査本部の調べによると、金子さんは20代半ばごろに家出をし、平成15年8月ごろに実兄(32)が家出人捜索願を提出。18年2月にいったんは家に連れ戻されたが、再び行方不明になった。各地を転々とした後、このアパートに転がり込んだとみられている。
 男性3人との生活は周囲の目にも奇妙に映ったのだろう。生前の金子さんの姿を覚えている地域住民も少なくない。
 「(金子さんが)化粧バッグを持って、男の運転する車で送り迎えされる姿をよく見た。朝9時ごろに出かけて、帰りはだいたい夜11時ぐらい。運転する男性は坊主頭で言葉遣いが悪く、とにかく怪しい感じだった」
 「(金子さんが)ご飯を作ったり、ゴミ出しをしている姿を見たことがある。挨拶をしたら普通に挨拶を返してくれて、愛想のよい人だった」
 そんな金子さんが行方をくらませたのは、7月2日ごろ。同居する知人男性が、金子さんを千葉市中央区内の路上に送り届けたのを最後にアパートには戻らず、同日夜には携帯が不通になり、金子さんとの連絡が取れなくなった。
 遺体で発見されたのは、その9日後だった。

 ■ネット上には“噂”が駆けめぐり…

 金子さんはどんなトラブルに巻き込まれたのか。
 捜査本部はアパートに同居していた男性3人について、「家宅捜索や事情聴取の結果、事件と直接的な関係があるとは言い難い」(幹部)と“シロ”とする見方を強めている。
 同居男性は、調べに対し「千葉港で女性の遺体があがったことは知っていたが、足の大きさが違うので彼女(金子さん)ではないと思っていた」などと供述している。
 捜査本部は両脚の発見時、金子さんの足の大きさを「約22センチ」と公表したが、金子さんは普段、それより大きいサイズの靴を履いていたといい、男性3人は「彼女じゃなくてよかった」などと話し合っていたという。
 とはいえ、アパート前には、場違いなベンツやロールスロイスなどの高級車がたびたび横付けされているのを目撃していた住民も多い。
 「あそこはヤクザの事務所」
 「巡回中のお巡りさんに『あそこには近づかないほうがいい』と言われた」
 そんな話もあり、周囲には不安が広がっている。
 また、以前このアパートに住んでいたという男性(28)は、「金子さんかどうかは分からない」と前置きした上で、こんな話をした。
 「1年前の夏ごろ、あの部屋に後輩が住んでいた。そいつが一緒に住んでいるという女がいたので、誰かと尋ねると、『風俗に勤めている女で、車で送り迎えをしている』と言っていた」
 仮にこの話が真実だとすれば、金子さんが不特定多数の男性と接触していた可能性も否定できない。
 《テレクラを通じて(金子さんと)会ったことがある−》
 インターネット上の匿名掲示板では、こんな内容の複数の書き込みがあるが、真偽は不明だ。
 一般的に犯罪者が遺体をバラバラにする理由としては、性的な趣向や恨みを除けば、(1)身元を隠し犯行の発覚を防ぐ(2)遺体を運搬しやすくする−などがあるとされる。
 裏を返せば、身近な人間による犯行など、遺体の身元判明後の犯人逮捕は比較的容易なケースが少なくないのだが、今回は少し事情が異なる可能性も出てきた。
 「あくまで推測でしかないが、重しを付けて東京湾に沈めるなどの手口から、“プロ”による犯行のにおいがする」
 こう話す捜査関係者もいる中、捜査本部は金子さんの交友関係の洗い出しに全力を挙げている。

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