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2008年09月12日(金) 21時16分

<パラリンピック>陸上の男子四百で伊藤がV…車いすT52毎日新聞

 【北京・飯山太郎】北京パラリンピックは第7日の12日、国家体育場などで各競技を行い、陸上の男子四百メートル(車いすT52)決勝で、伊藤智也(三重)が57秒25の大会新記録で優勝。連覇を狙った高田稔浩(福井)が2位に入った。今大会で日本勢が獲得した金メダルは3個目。

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 自転車男子ロードタイムトライアル(24.8キロ)で、脳性まひのクラスで石井雅史、運動機能障害のクラスでは藤田征樹(以上神奈川)が、銅メダルを獲得した。ともに今大会3個目のメダル

 車いすテニス男子シングルス準々決勝で、第1シードの国枝慎吾(千葉)はスウェーデン選手にストレート勝ちしてベスト4入り。

 車いすバスケットボール女子は、1次リーグ全勝の日本が英国を降して準決勝に進出。車いすラグビーで、日本は前回準優勝のカナダと対戦し、初戦を落とした。ゴールボールの女子は初勝利を挙げた。

 日本のメダル総数は2ケタになった。 

 ▽高田稔浩 (前回大会優勝で、今回は銀メダル)予選に続いて、自己ベストを少しでも更新できたことに満足している。 

 ▽島川慎一 (車いすラグビー・カナダ戦で17得点) 前回アテネ大会銀のカナダを相手に、試合はできたと思う。日本は4年前とは全然違う。

 ▽小谷謙二 (陸上八百メートルT54で、前夜の予選時に転倒。救済措置で準決勝に進んだが敗退)スタートが遅すぎた。大きなけがもなくコンディションも悪くなかった。だが、最後のコーナーで前の選手が競り合っているのを見て、転倒が頭をよぎって前に行けなかった。

 ◇掲揚塔に2枚の日の丸

 日本のベテラン2人が鮮やかな「ワンツーフィニッシュ」を飾った。長距離種目から転向した45歳の伊藤と、四百メートル前回大会覇者の43歳の高田が、掲揚塔に2枚の日の丸を掲げた。

 伊藤は後続を寄せ付けなかった。200メートル過ぎから次第に順位を上げ、ラスト100メートルは独走状態。最後は2位高田に3秒以上の大差をつけた。前回アテネでは五千メートルとマラソンでともに4位。昨年9月に「パラリンピックに再挑戦しようと思ったら、選考会が残っていたのが四百メートルと八百メートルしかなかった」と、中距離種目狙いに転向。98年に筋肉の難病を発症して車いすでの生活となったが、長距離では届かなかったメダルに「今までいろんな方々に支えて頂いたおかげ」と満面の笑みを見せた。

 高田はアテネのマラソンを含む中長距離種目で、金3個を含むメダル4個を獲得した。今大会では精彩を欠いていたが、決勝は伊藤を懸命に追って予選に続いて自己ベストを更新。「前回に比べ、12歳の次女が障害のある自分との違いを意識し始めた。その中で『パパはこんなこともできるんだ』と知って欲しかった」。父の意地を見せた銀メダルだった。

 ともに並んだ表彰台の上でメダルを受け取ると、二人は握手して健闘をたたえ合った。互いの、この大会、このレースに懸けた思いがこもった、固い握手だった。【飯山太郎】

 ◇島川「試合はできた」と手応え…車いすラグビー

 前回アテネ銀のカナダに8点差。1ゴールで1得点の車いすラグビーでは大差だ。だがこの日17点を挙げた島川は「試合はできたと思う」。2度目のパラリンピックでの初戦で日本のエースが手応えをつかんだ。

 障害の程度に応じ、各選手は0.5から0.5点刻みで7クラスに区分され、コート上の4選手のクラス合計は8点以内でなくてはならない。初出場の前回アテネ大会では事前の申告と実際に判定されたクラスが食い違い、メンバーの組み合わせ変更を余儀なくされて全敗を喫した。塩沢監督は「国際経験が足りなかった」と振り返る。

 今回は練習を積んできた通りの構成で試合に臨み、強豪相手に第3クオーターまで3点差と粘った。アテネ大会では全チームを通じた最多得点をマークし、05年から今春まで米国内リーグでプレーしてきた島川は、得意の速攻が再三決まった。

 1次リーグで残る対戦相手は前回銅の米国と、開催国の中国。チームの今大会の目標は「パラリンピック初勝利」だが、島川は「日本は4年前とは全然違う」と言い切った。【飯山太郎】

 ○…車いすレースの長距離から転向した伊藤が四百メートル種目で金メダル。全体の2位で進んだ決勝レースではバッグストレートで順位を一気に上げ、最終コーナーをトップで迎えて逃げ切った。98年に筋肉の難病「多発性硬化症」を発症。車いすが必要となったが、日常生活で使うものとは別にレース用にも試乗してみたのが、競技に取り組むきっかけだった。

 04年アテネ大会では五千メートルとマラソンで4位となっているが、今回は「パラリンピック再挑戦を決めた昨年9月時点で、選考会があったのが四百メートルと八百メートルしかなかった」という。45歳のベテランランナーは金メダル獲得を「支えてくれた方々のおかげ」と表現した。 

 【ことば】車いすラグビー バスケットボールコートを使用した男女共通競技で4人制。チームは交代を含む12人で構成される。ボールをひざの上に載せるか、投げたり手で打つなどによるパスで前進し、ボールを持つ選手の車いすの2輪がゴールラインに達すれば1点を獲得。前方へのパスも認められる。4ピリオド制で各ピリオドは8分間。

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