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2008年09月11日(木) 22時45分

事故米不正転売 「あまりにひどい」関係者絶句 楽しみの赤飯も…産経新聞

 食の安全に最も気を使うべき施設にまで“汚染”は広がっていた。米粉加工販売会社「三笠フーズ」(大阪市北区)による汚染米の不正転売問題は11日、問題の米が食用にも利用されていたことが判明、近畿2府4県の病院や高齢者施設に納入され、患者やお年寄りが口にしていた。「あまりにひどい」「何を信じていいのか」。関係者は憤りをあらわにした。

 ■楽しみだった赤飯が…
 和歌山県那智勝浦町の介護老人保健福祉施設では、6月30日から9月6日の間に毎月1回1キロずつ仕入れ、その日のうちに調理して赤飯などとして入所者約100人に出していた。

 入所者に健康上の異常はなかったが、施設の担当課長は「仕入れ先が大手の業者だったので今は何を信じていいのかわからない。何も防御策がない」と困惑した様子で、「食の安全については普段から最大限の注意を払っている。とにかく事実関係をはっきりしてほしい」。

 大阪府箕面市今宮の医療施設「清順堂ためなが温泉病院」でも毎月1日の昼食の赤飯として、三笠フーズのもち米が使われていた。1回の昼食で、入院患者約100人と従業員約150人の計約250人が食べていたという。

 為永順子・前総務部長(71)は「赤飯は20年前から始めており、お年寄りたちの人気メニューだった。事故米だったとは考えもしなかった」と絶句。「患者さんに大変申し訳ないことをした。腹が立つのを通り越してあきれるばかり」と怒りが治まらない様子だった。

 ■電話が殺到
 事故米を卸していた日清医療食品(東京都)の広報担当者も「事故米は加工品だけだと思っていたので、正直驚いている」と話した。同社では近畿一円の医療施設や高齢者福祉施設で、食事を調理する業務を受託、5月1日から9月8日にかけて、1キロごとのパックに詰められたもち米約700キロを使ったという。

 同社近畿支店(京都市中京区)ではこの日、納入先の病院などから事実確認のための電話が殺到。社員数十人が対応に追われた。もち米以外にも事故米が使われたと思い、確認してくるケースも多かったという。

 社員の1人は「まだ、どれぐらいのもち米がどこに納入したのかきちんと把握していない。とにかく急いで確認を進めます」と憔悴(しようすい)し切った様子で話した。

 ■人気商品だったのに
 一方、事故米は大手メーカーの焼酎にも含まれていた。アサヒビール(東京都)によると、自主回収する65万本の芋焼酎のうち、同社の人気商品「かのか」は27万本。広報担当者は「ブランド全体に与える影響は未知数」と不安そうに話した。

 大阪南部で19店舗を運営するスーパーマーケット「サンプラザ」(羽曳野市)では、かのかシリーズ約300本を一斉に店頭から撤去。仕入れ担当者(55)は「売れ筋の商品だったので大きな痛手。これまでに自主回収した『薩摩宝山』や『美少年』も取り扱っていたため、陳列棚がすき間だらけになった店もある」。

 近畿地方で86店舗を持つイズミヤ(大阪市西成区)でも、かのかは今年3月〜8月の半年間で約2000本を仕入れた人気商品だっただけに、広報担当者は「消費者の不信感が焼酎全体に飛び火しないか心配」と話した。

 居酒屋などに焼酎を卸していた大阪市西区の森脇酒店でも、店員らが取引先を回り、かのかなど対象商品の回収に当たった。店主の左川愛子さん(70)は「仕入れ先に『大丈夫だ』といわれていた商品にも、事故米が混ざっていた。流通経路が複雑だけに、この先どこまで被害が広がるのか心配だ」と表情を曇らせた。

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