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2008年09月11日(木) 21時40分

<パラリンピック>意地の1勝目指す…ゴールボール女子毎日新聞

 【北京・石丸整】ゴールボール女子でパラリンピック初出場の安達阿記子選手(24)=福岡市=が11日、中国戦で初ゴールを決めた。しかし、チームは1−3で敗れ5連敗。「巻き返したい気持ちでいっぱいだったのに」と悔しがる安達選手。6位以下が決定したが、12日のブラジル戦で意地の1勝を目指す。

 試合開始10分。高田朋枝選手(24)が「アキ!」と短く声を掛け、ボールを手渡した。安達選手が力いっぱい転がしたボールは「シャンシャン」と鈴の音を鳴らしながら相手選手の間をすり抜け、ゴールに吸い込まれた。先制点。高田選手と抱き合い喜んだ。観客席を埋めた中国チームの応援団がざわついた。

 福岡県八女市出身。中学2年の数学の授業中、右目がチカチカして黒板のグラフが途切れて見えるようになった。網膜の毛細血管に異常が出て、視界が欠けたりゆがんだりする黄斑変性症だった。

 高校卒業後は地元でエレクトーン教室を開いていたが、20歳の時に左目にも同じ症状が出た。砂嵐の固まりのような白黒の画像が視界の中心から消えなくなった。「なってしまったものは仕方がない。生活しなきゃ」とリハビリ施設に通い、拡大機で文字を読む練習や音声誘導でパソコンを使う練習をした。

 05年にマッサージ師の資格を取るために福岡市の福岡視力障害センターに入学。クラブ活動でゴールボールと出合った。最初はボールが見えない所から転がってくるのが怖くて、じっとしていた。そのうちに体を倒してボールを止められるようになった。「うれしくて、ちょっと続けてみよう、頑張ってみようという気になった」

 ゴールボールは日本に6チームしかない。ボールを投げる力強さを買われ、07年4月に日本代表に選ばれた。

 高校生の時、和太鼓にのめり込んだ。試合前、競技場へのバスの中で安達選手の音頭でチームの全員が「ドンドコドコドコ」と口でリズムを取り、「勝つぞ」と声を合わせる。

 士気を高揚して臨んだ中国戦だが逆転負け。「世界は強いと実感した。日本に帰ったら生活するために勉強もしなきゃいけないけど、ゴールボールも続ける」。すっかり生活の一部になっている。

 ◇ゴールボール   

 視覚障害者ができるスポーツとして、1946年にドイツとオーストリアで紹介された。1チーム3人が目隠しをして、中に鈴の入った重さ1.25キロのボールを転がして相手のゴールを狙う。76年のカナダ・トロントパラリンピックから採用されている。日本は女子が初出場した04年アテネ大会で銅メダルを獲得した。

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