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2008年09月11日(木) 15時36分

【北京パラリンピック】第6日 陸上二百で八巻が「銀」産経新聞

 【北京=川越一】北京五輪大会第6日の11日、陸上女子二百メートル(車いすT52)で八巻智美選手(37)=福島=が37秒44の日本新記録をマークして銀メダルを獲得した。今大会、陸上の日本勢としては初のメダル。また、競泳男子五十メートル平泳ぎ(運動機能障害SB3)予選で早大4年の鈴木孝幸選手(21)=静岡=が48秒49の世界新記録をマークし、全体の1位で同日夕の決勝に進んだ。

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 直線に入って頭を上げると、ライバルのミシェル選手(カナダ)の姿が見えた。「あっ、近いな」。距離はなかなか縮まらなかったが、最後まで車輪に力を伝え続けた。「やっぱり金がよかったですけど、最高の結果が残せたかな」。あきらめかけた夢をつかんだ。

 昨年10月の大分国際車いすマラソン大会で2時間9分50秒の世界新記録をマークするなど、本来はマラソンが本職だ。パラリンピックにはT52クラスのマラソンがないため、一時、短距離に転向してパラリンピックを目指した。フォームも練習方法も違う種目への転向を悩んだが、その度に理解者が現れて解決してくれた。パラリンピックの舞台でも、地元・福島の仲間が作ってくれた特製グラブが支えてくれた。

 中学時代に右半身がまひ。入院中に病院の階段から落ちて脊髄(せきずい)を損傷した。境遇を恨んだこともあったが、「普通に平和に何もなく過ごしていては、こういう感動とか、たくさんの人に巡り合うこともなかったし、この場に立つこともなかった。逆に感謝なのかな。誇りに思って生きていきたいと思います」。

 ミスの許されない短距離の練習はマラソン以上に辛かった。短距離は今回限りと口にしていたが、「ミシェルが走り続けているうちに一度くらいは抜いてみたいという欲がわいてきた」。競技の魅力に取り憑(つ)かれてしまった。

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