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2008年09月11日(木) 00時00分

アキバとIBM、店頭展示PCで社会貢献活動読売新聞

 世界的にエネルギー問題への関心が高まる中、秋葉原電気街の店頭展示用パソコン約100台の有効活用を狙い、IBMがワールドワイドで推進する研究プロジェクトに量販店5店舗が参加、成果を上げた。

展示パソコンをつなぎ演算処理

秋葉原のオノデン店頭に置かれた「ワールド・コミュニティー・グリッド」のプログラム動作中のパソコン

 大型家電量販店の中には、エネルギー使用量削減のため、来店客数の少ない時間には展示製品の電源を切っておく店が増えている。しかし、パソコンに関しては「起動時間がかかるため、お客様が来店してからスイッチを入れていたのでは接客がうまくいかないため、いなくても電源を入れて展示せざるを得ない」と、秋葉原電気街振興会の小野一志会長(オノデン社長)は指摘する。

 そんな中、日本アイ・ビー・エム(IBM)と産学連携推進機構が協力、このほど秋葉原電気街で実施されたのが、展示中のパソコンを “グリッドコンピューティング” に活用する「アキバ型環境貢献活動『活エネ・キャンペーン@アキバ』」である。

 グリッドコンピューティングとは、ネットワークで結ばれた数千〜数万台のパソコンのパワーを結集することで、本来は超大型コンピューターでなければできないような複雑な演算処理を行う仕組み。

 今回、この仕組みを使って参加したプロジェクトは、米ワシントン大学が進める「高栄養価の米を世界に」という研究活動。IBMが世界的規模で推進する社会貢献活動「ワールド・コミュニティー・グリッド」の中の一つだ。6月30日〜7月6日の1週間、秋葉原電気街振興会に参加する石丸電気、オノデン、九十九電機、ソフマップ、ラオックスの5社の店頭にある計104台のパソコンが使われた。

 1週間という限られた期間ながら、稼働貢献時間の合計は162日3時間25分25秒で、キャンペーン終了時点で世界1万9851チーム中8937位と、良好な成果を残した。

創意工夫で地球環境を考える

 今回の成果について日本IBMは、「産学連携推進機構とは、今後とも類似した取り組みについて、秋葉原での継続的な実施を含め、様々な分野において協力することを検討している」(社会貢献 藤井恵子係長)という。

 ただ、店頭展示品を別用途に利用するという今回の試みでは、プロジェクトを実施して初めてわかった問題点も多かったようだ。

 プロジェクトで利用したプログラムは、スクリーンセーバーのバックエンドで動く。容量は小さく、負荷の少ないもので、インストールや稼働については、全く問題はなかった。ただし、プログラムのインストール作業、演算を終了したデータをサーバーに転送するためのインターネット接続が必要となる。

 しかし、店頭展示用パソコンにはセキュリティートラブルなどを防ぐため、あえてネットワークに接続していないものが多い。プログラム自体はオフラインでも動くので動作自体に問題はなかったが、インストールや計算結果転送のための工夫が必要となった。

 そこで日本IBMは、キャンペーン開始前の週に各店舗の協力を仰ぎ、開店直後や閉店前に展示用PCそれぞれに5分弱かけてインストール作業を実施。計算結果回収のためには、日本IBMの社員ボランティアが2〜3日に1度、店頭で終了したデータの転送作業を行った。今回は秋葉原のような店舗が密集する地域だったため、社員が店舗に出向くことも可能だったが、これが全国チェーンの各店舗との連携といったことになると、社員ボランティアの対応だけでは不十分となるだろう。

 これら諸問題を考慮したうえで藤井係長は「今回は秋葉原電気街振興会の各企業トップの方々に提案、ご協力をお願いしたが、今後はトップのご協力はもちろん、各店舗の現場担当の方との事前打ち合わせと協力によって、より発展的な取り組みができるはず」と力説する。

 エネルギーの有効活用には、知恵と工夫が必要となる。電力を大量に消費する量販店に限らず、様々な試行錯誤が行われてしかるべきだろう。(フリーライター・ 三浦優子/2008年8月24日発売「YOMIURI PC」2008年10月号から)

http://www.yomiuri.co.jp/net/frompc/20080911nt02.htm