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2008年09月11日(木) 09時12分

パラリンピックにも「LR」旋風 対応遅れる日中産経新聞

 【北京=川越一】北京五輪で話題を呼んだ“魔法の水着”、英スピード社のレーザー・レーサー(LR)が障害者スポーツの祭典、北京パラリンピックでも主流になっている。欧米選手を中心に使用選手が急増。一方、男女それぞれ3選手がLRの提供を受けただけの日本競泳陣は苦戦を強いられている。
 第4日目まで日本の競泳陣はわずかに銅メダル1個。各国選手のレベルアップと同時に水着の差も見逃せない。男子百メートル自由形(運動機能障害6)に出場した小山恭輔(東京)は、同組で泳いだ欧米選手のほとんど全員がLRを着用していることに驚いた。
 使用した選手が「進みやすい」「後半疲れにくい」と声をそろえるLRだが、着用することによって恩恵が得られるのは泳ぎの面だけではない。小山は「精神的な効果が大きい」と指摘する。同じスタートラインに立つことができなければ、戦う前からあきらめムードが漂ってしまう。
 日本選手は北京入りしてから現物を渡された。着用選手はどうやって選んだのか。小山は口ごもるが、既製品のため、両腕や両足の太さが違う障害者はすき間ができてしまうため着用できない。結局、男子では小山のほか、条件に合致した山田拓朗(兵庫)、河合純一(静岡)に使用する“特権”が与えられた。
 しかし、欧米選手は左右の足の太さが違っても、改良して使用するなど事前に準備を進めていた。山田は「世界では五輪と同じ待遇を受けている国もある。日本は自費で水着を購入しなければならなかったりする。サポート態勢を充実させてくれたら、もっと強くなる」とこぼした。1着6万円とされる“高級品”は、日本選手にとっても高根の花なのだ。
 もっとも、時流にまったく見向きもしない強豪国もある。中国だ。五輪選手の使用に関しても、最後まで契約メーカーの水着を優先させるとしていたが、障害者スポーツに対する支援はまだ立ち遅れている様子。小山は「中国だけはみんな、LRでも、アリーナ社の新素材水着でもなく、ひと昔前の水着を着ていた」と証言する。
 プロ化が進むパラリンピック界。資金力や用具によって順位が大きく左右されるようになっては、大会の意義が損なわれかねない。

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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080911-00000914-san-spo