記事登録
2008年09月10日(水) 15時01分

<法科大学院>4割が「定員削減必要」 司法試験合格率低く毎日新聞

 全国の法科大学院74校の4割が、現在の総定員約5800人の削減が必要と考えていることが、毎日新聞のアンケートで分かった。目標の合格率(8〜7割)を大幅に下回り、法曹資格を手にできない志望者が増えているためで、既に3校が定員の削減を決め、5校が定数減を検討している。地方の法科大学院には「首都圏への偏重を解消すべきだ」との意見が多く、首都圏に乱立する法科大学院を軸に再編論議も起きそうだ。

 アンケートは3回目の新司法試験合格発表となる11日を前に、法科大学院全74校を対象に8月下旬〜9月上旬に行い、55校(74%)が回答した。

 総定員について「整理(削減)が必要」と回答した法科大学院は22校(40%)。「必要ない」が25校(45%)でほぼ同じ割合となった。無回答か「どちらとも言えない」は8校あった。

 「整理が必要」と回答した大学院には、都市部に集中した大学院の定数を減らすべきだとの声が多く、「首都圏一極集中の配置は避けるべきだ」(鹿児島大)、「大規模な法科大学院の定数を削減し、入学者を地方に分散させるのが良い」(久留米大)など、偏在の解消を求める意見が目立った。

 関東学院大が法科大学院の定員を今年度、30人削減した。来年度は福岡大が20人、姫路独協大が10人削減する。

 07年の新司法試験合格者数は1851人で、合格率は40%にとどまっている。政府の司法制度改革審議会の意見書(01年)が例示した「約7〜8割が合格」とする目安を大きく下回った。08年の合格者数は、法務省が受験者6261人に対して2100〜2500人との目安を定めており、合格率は3割台に落ち込む見込みだ。

 法科大学院の定員を巡っては、保岡興治法相が8月、「教育能力のないところは合併するとか、整理されてしかるべきだ」と述べている。【石川淳一】

 ▽宮沢節生・青山学院大法科大学院教授の話 4割が総定員の削減を必要としている意味は大きいが、大多数がまだ自校の問題として認識していない。過半数が法曹資格を取得できない定員の維持は、学生の経済的な搾取にほかならず、設置基準や認証評価基準の強化で全法科大学院が定数削減に取り組む状況をつくるべきだ。

 ◇教育能力に見合う改革必要

 法科大学院の4割が総定員数(約5800人)削減の必要性を回答した毎日新聞のアンケートは、一定水準の合格率という「実績」を維持できない各大学院の危機感を浮かび上がらせた。だが、実際に定員を見直す法科大学院は一部にとどまる。法科大学院を巡っては「質」も問題視されており、教育能力に見合った改革が求められる。

 法科大学院の総定員数は導入時「15〜20校で4000人程度」だった。背景には、司法試験合格者を年3000人に増やす政府の方針と、「合格率7〜8割」の目安があった。だが、「大学の法学部に優秀な学生を集めたい」とする経営戦略も絡んで74校に増え、「司法制度改革の理念とかい離する」(改革に携わった自民党国会議員)との批判も出始めた。法務省幹部は「多くの大学院が質の低い学生しか送り出せない現実が問題だ」と指摘する。

 また、法科大学院では学部との兼任教員が依然多く、修了認定も甘いなど養成機能が問題視されている。一方「外車1台分」とも言われる学費が優秀な学生を除外する要因となり、奨学金制度の充実を求める声も上がる。

 優秀な法曹志望者を獲得する趣旨を考えれば、一定の定員を維持するのは必要だ。だが、大量の司法試験不合格者を生み出している現状は、法科大学院が養成機関としての機能を十分に果たしておらず、多くの志望者を不幸にしていると言わざるを得ない。【石川淳一】

【関連ニュース】
法務省:新任検事に辞令交付
司法修習生:33人「卒業」できず 06年旧試験合格者ら
法科大学院:「不適合」評価の愛知大の異議申し立てを却下
法科大学院:志願者数も倍率も過去最低
法科大学院:愛知大に「不適合」評価 日弁連法務研究財団

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080910-00000047-mai-soci