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2008年09月09日(火) 08時01分

商社の汚染米も転売 三笠フーズ 焼酎5社を公表産経新聞

 米加工販売会社「三笠フーズ」(大阪市)の事故米不正転売問題で、同社が、政府から購入した事故米とは別に、大手商社から基準値を超える農薬やカビのため工業用とされた事故米743トンを購入し、一部を食用として転売していたことが8日、農林水産省の調べで分かった。農水省は同日、事故米の転売・流通先となっていた5焼酎メーカーの名前を公表した。

 また、政府から購入した事故米1779トンのうち、カビなどの事故米数百トンについても不正転売していたことも新たに判明。殺虫剤メタミドホスが検出された中国米など434トンの転売とともに、同省が全容解明を進めている。

 同省によると、三笠フーズは、平成17年度に住友商事がタイから輸入したミニマムアクセス米のうち、カビのため政府に引き渡しできなかった145トンを購入。18年度には基準値を超えた殺虫剤アセタミプリドが検出されたベトナム米598トンを、同様に双日から業者を通じて入手した。

 このうち、双日が輸入したベトナム米の一部が焼酎の原料として、熊本県の「抜群酒造」「六調子酒造」と鹿児島県の「喜界島酒造」、非公表の1社に売却され、仲介業者を通じて福岡県の「光酒造」と鹿児島県の「西酒造」にも売却された。喜界島酒造と西酒造は、カビ毒「アフラトキシンB1」が検出された政府の事故米も、三笠フーズから転売を受けていた。

 西酒造は事故米が有名銘柄「薩摩宝山」に混入した可能性が高いとして自主回収を開始、抜群酒造も回収を始めた。六調子酒造と喜界島酒造、光酒造は「出荷前」などとしているが、安全が確認されるまで販売を自粛した。

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 農水省は8日、三笠フーズの九州工場(福岡県)を改めて立ち入り調査。また、事故米を購入している住友商事、双日の両社と16業者の一斉点検を始めた。

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 ■農水省「監視不十分だった」

 虚偽の加工計画書、工場の偽装作業、二重帳簿…。三笠フーズは悪質な隠蔽(いんぺい)工作を重ね、農水省の検査をだまし続けた。一方、不正を見抜けない甘い検査態勢にも批判が集まり、農水省は8日、「監視体制が不十分だった」と認めた。

 三笠フーズは事故米を加工する虚偽の日程などを盛り込んだ計画書を農水省に提出していた。同省の担当官が検査に来ると、急遽(きゅうきょ)加工機械を稼働させ、工業用糊(のり)を作っているように見せたという。

 コメ粉を糊用の袋に詰め虚偽の台帳を見せる。しかし、担当官が帰ると機械はストップ。工業用の袋に詰められたコメ粉は、食用の袋に詰め替えられた。

 悪質な偽装工作だが、農水省側にも落ち度があった。検査は抜き打ちでなく、1日前の通告制。昨年1月には三笠フーズの不正を告発する封書も届いたが、だまされ続けた。

 野田聖子消費者行政担当相が「チェックが甘かった」と述べるなど批判を浴びた農水省。白須敏朗農水事務次官は検査の不備を認め、「確実に(事故米を工業用に)加工する業者を探せないなら(事故米の)廃棄も検討する」と述べた。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080909-00000090-san-bus_all