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2008年09月09日(火) 16時00分

野村證券、NHK、印刷会社社員・・・増加するインサイダー取引事件の背景MONEYzine

 今年7月に、社員によるインサイダー取引が明るみになり、野村證券に対する業務改善命令が発出された。それまでにも06年に日経新聞社員によるインサイダー取引事件が、08年に入ってからは、宝印刷社員、NHK記者、さらに新日本監査法人所属会計士によるインサイダー取引事件が立て続けに起きている。

 野村総合研究所が発表したインサイダー取引に関するレポートからも、06年からインサイダー事件の件数は急増していることがわかる。企業の法令遵守が重要視される今、なぜ事件の件数が増加しているのだろうか。

 その理由について、野村総合研究所の主席研究員、大崎貞和氏は同レポートで「04年には、行政上の措置として違法行為の抑止のために金銭的な負担を科す課徴金制度が導入され、インサイダー取引もその対象とされた」ことが1つの要因であるとしている。かつては刑事罰を科すほど悪質ではないとして見過ごされてきた少額の事案も厳しくなり、摘発件数が増加しているのだ。

 また証券取引所の取引監視システムの強化や証券会社における本人確認の徹底などで、インサイダー事件の摘発につながる不審な取引の発見が容易になっていることも見逃せない。つまり「摘発事件の増加は、違反自体の増加によると言うよりは摘発される割合が高まったことによるとみるべき」(同氏)という意見もあるのだ。

 金融商品取引法は、年々規制が厳しくなる傾向があり、上場会社の役員など特定の立場にある人の株式取引についても厳しい規制を設けているが、インサイダー取引は古くからある犯罪で、窃盗や強盗と同様に根絶が難しいのも事実だ。規制を厳しくした結果、ルールをこれまで遵守してきた真面目な役職員のストック・オプションなどに対する投資意欲を減退させるなどの弊害を招く危険性もともなっている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080909-00000000-sh_mon-bus_all