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2008年09月08日(月) 16時55分

ジャンケンを制するものは世界を制す?ツカサネット新聞

内藤や坂田に亀田がどのように絡むのか注目が集まっているボクシング界。
その一方で、今月15日に行われるトリプル世界戦の話題はあまり注目を集めていない。そしてその過程でおそらく史上初の珍事が起こったことも。

それはトリプル世界戦のうちの1つ、WBA世界スーパーフライ級王座決定戦・元王者の名城信男対同級3位の河野公平戦のルールミーティングでのことだった。

メキシコ製のグローブ使用を求めた名城陣営に対し、河野陣営は日本製を要求。グローブの使用権は通常の世界戦であれば王者側が、決定戦であれば興行のプロモーターがそれぞれ保有しているのだが、今回は決定戦史上初の日本人対決ということで主催は中立の立場にある帝拳ジムとなっている。よって両陣営に使用における選択権はなく、どちらかが引かない限りは主張が平行線を辿るだけなのである。

とはいえ、たかがグローブされどグローブである。
メキシコ製というのは拳の部分が薄く硬いため、パンチの衝撃を相手に伝えやすいことで知られている。それゆえにハードパンチャーが持ち味を活かすために好んで使う傾向にある。ファイタースタイルの名城が今回メキシコ製を選んでいることもそれを裏付けている。逆にオーソドックスなスタイルの河野としては相手の有利さを少しでも減らすことで、自身の立場を有利な方へ持っていきたいところである。決定権が自分にないかわりに相手もないわけだから、メキシコ製の不使用を要求するのは当然である。

ならば両者が好むグローブをそれぞれ使えばいいではないか、との声も出てきそうだが、それでは単純に公平さに欠けてしまう。また国内の世界戦では両者が同じ製品を使用するという慣習があることも、今回の騒動の理由の1つであろう。

さて勝敗を大きく左右する今回のグローブ問題。
当初は話し合いでの解決を試みたものの互いに譲らず、コイントスによって選択権を決める案も出された。だが最終的に決まった決定方法は何とジャンケン。世界戦のラウンド数に引っ掛けて、先に7勝すれば選択権を得られるジャンケン12回戦が選択権決定方法として採用されたのである。勝敗を大きく左右する要素の1つであるグローブの選択権をジャンケンで決める、冗談のような話だが当人たちはいたって大真面目。名城陣営は代表決定ジャンケンまで行うほどの熱の入れようであり、本人が参加する河野陣営も「ボクサーだから拳=グーで勝負」と戦略まで練るほどである。

そして行われた日本ボクシングコミッション立会いの下でのグローブ選択権決定戦12回戦。
名城陣営を代表して六島ジム枝川会長と河野陣営を代表して河野本人との戦いは7勝4敗で名城陣営に軍配が上がった。勝った枝川代表は「11回KO勝ちや!」と喜び、「人は緊張したらグーを出す」と相手の戦略を読みきったことを勝算に挙げた。一方敗れた河野は「グーにこだわりすぎた」と嘆き落胆していた。

これによってグローブはメキシコ製が採用されることに決まった。
先にも書いたようにメキシコ製はハードパンチャーが好んで使う傾向にある。名城がそれを望んだのも自身のスタイルゆえであり、試合でも序盤から積極的にパンチを出してくることが予想され、早い時間での決着を狙っているだろう。実際名城の戦績(12戦11勝7KO)を見ると、KO(TKO含む)勝利の実に8割が3ラウンド以内で決着しているのである。しかし逆に考えれば序盤を乗り越えれば河野にも十分チャンスはある。ハードパンチャーは得てして後半のスタミナに不安があり、野球で言う先発完投型のオーソドックススタイルの河野としては後半勝負に持っていきたいところであろう。

グーにこだわってジャンケンに負けた河野だが、「試合ではグーで思いっきり握って勝ちますよ」と気持ちを切り替えていた。それぞれのこだわりに勝利の女神はどう応えるのだろうか。


(記者:adios7210)

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