記事登録
2008年09月08日(月) 23時04分

【JR脱線事故】安全優先の企業風土できるか JR西の社長続投で産経新聞

 JR福知山線脱線事故で書類送検されたJR西日本の山崎正夫社長の退任を求める声が高まる中、山崎氏が8日の記者会見で経営トップとして責任をまっとうしたい意向を示したのは、「JR西を安全最優先の企業風土に変えたい」意欲のあらわれとみられる。
 事故発生後、井手正敬取締役相談役と南谷昌二郎会長(現顧問)と垣内剛社長(同)が責任をとって総退陣した。
 そんな中、元常務で子会社社長(ジェイアール西日本メンテック)の山崎氏に白羽の矢が立ったのは、鉄道本部長や安全対策室長の経験を買われたからにほかならない。
 就任後、周囲に「社長業は重荷」と漏らした山崎氏には「短期で終わる」とみる向きもあった。しかし本命視された丸尾和明副社長が日本旅行社長に転出し、後継者レースは混迷の度合いを増している。
 丸尾氏の“脱落”は、批判を浴びたJR西の社員研修「日勤教育」を正当化する発言をしたためとの見方が強い。
 信頼回復に向けて強力なリーダーシップが求められる中、山崎氏の後任候補として名前があがっているのが佐々木隆之副社長と西川直輝副社長の2人だ。
 平成14年6月、子会社(ジェイアール西日本デイリーサービスネット)社長から就任した佐々木氏は人事部長、財務部長を経験し、技術系トップである山崎氏の補佐役。西川氏は今年7月に取締役から抜擢(ばってき)され、安全基本計画の作成を担った。
 ただ、安全面への投資を行いつつ、新幹線を中心とする事業に注力して増収増益を達成した山崎氏には、「山崎流の社内改革が浸透しつつある」と評価する向きもある。
 垣内前社長時代の5カ年中期計画を1年前倒しで19年度に終え、今年度から安全と経営変革の両輪を柱とした新5カ年中期計画を進めるなど「変革を目指す決意を感じる」(JR西の変革推進会議委員長の野村明雄大阪ガス会長)との指摘も少なくない。
 今後の焦点は、神戸地検が山崎氏の起訴に踏み切るかどうかだ。起訴されれば被害者遺族や利用者、株主から辞任を求める圧力は強まるとみられ、山崎氏は捜査当局の判断を念頭に置きながらの社内改革を迫られることになる。
     ◇
 兵庫県警から書類送検を受けた神戸地検の山根英嗣次席検事は8日、「事件の重大性を踏まえ、記録などを十分検討し、必要な捜査を行って、事実関係の究明と、適正な処分を行う」とのコメントを発表した。
 また、同地検は同日、被害者が多数に上り、さまざまな被害感情があることを考慮して、近日中にすべての遺族と被害者らに対し、被害感情や捜査への要望を聴くための用紙を入れた手紙を送付する方針を明らかにした。さらに遺族らからの問い合わせに対応する専用回線を設置するという。

【関連記事】
JR西社長ら10人を書類送検 福知山線事故で兵庫県警
現場カーブのATS未設置など3通り 週明けの送検全容判明 JR脱線事故
尼崎JR脱線事故 告訴対象はJR西日本社長ら7人
JR脱線事故の遺族、賠償問題で集団交渉を行う団体設立
JR脱線事故の衝突マンション、保存の是非を議論 負傷者ら企画

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080908-00000993-san-soci