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2008年09月08日(月) 21時35分

【JR脱線事故】神戸地検の起訴の可否判断が今後のカギに産経新聞

 兵庫県警がJR西日本関係者10人を書類送検したことで、捜査の焦点は神戸地検が起訴の可否をどのように判断するかに移った。
 10人のうち山崎正夫社長ら5人について県警は、送検の際に付ける犯罪事実や情状に関する4段階の意見のうち2番目に重い「相当処分」を付けた。
 事故は、死亡した運転士の速度超過が直接的な原因だが、5人は現場カーブを急カーブに付け替えた際、自動列車停止装置(ATS)を整備せず、事故を防ぐ措置を怠ったことが過失にあたるとして書類送検された。
 強く起訴を求める「厳重処分」でなく、「相当処分」の意見にとどめたのは、付け替え当時、ATSを設置することでこのような事故の阻止を予見できたとする「結果回避義務」を、公判で立証することが困難との見方もあることを考慮したため。検察庁は今後、5人の処分について慎重に検討を重ねるとみられるが、捜査関係者の間では「起訴は難しいのではないか」との声もある。
 遺族や負傷者らが起訴を求めているのは懲罰感情だけでなく、公判が開かれなければ捜査資料が開示されないとの理由も大きい。
 このためすでに一部の遺族の中では、仮に5人を含む幹部らが不起訴となった場合、検察審査会へ申し立てることが想定されている。
 これまで、検察審査会の議決には法的拘束力がなかった。「不起訴不当」や「起訴相当」を議決され、検察が再捜査するケースはあったが、大半は再び不起訴となり、公訴時効を迎えることが多かった。
 しかし、裁判員制度とともに来年5月に施行される改正検察審査会法では、2度の「起訴相当」で必ず公判が開かれるようになる。具体的には「起訴相当」が議決されると、検察は3カ月以内の再処分を求められる。ここでも不起訴だった場合、再審査が開かれ、審査員11人中8人以上が「起訴相当」と判断すると「起訴議決」が出され、裁判所指定の弁護士が強制起訴。公判に持ち込まれることとなる。
 今回の事故の場合、改正法が適用される公算が極めて高く、今後の行方が注目される。

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