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2008年09月08日(月) 19時42分

【パラリンピック・競泳】奈良恵里加 母の死乗り越え、輝く姿伝えたい産経新聞

 【北京=川越一】北京パラリンピックで8日、前回アテネ大会競泳の銅メダリスト、奈良恵里加選手(30)=前橋市=が、母の死を乗り越えて競泳女子百メートル自由形S5(運動機能障害)に出場した。
 パラリンピック出場は、シドニー、アテネに続き3度目だ。前回は銅メダル2個を獲得したが、世界のレベルアップは予想以上。ここ数日は微熱もあり、体調は万全とはいえなかった。
 招集所まで付き添ってくれた成田真由美選手(神奈川)が「気持ちよく泳げば決勝に残れる」と声をかけてくれたが、緊張は解けなかった。「抜かれないようにと思ったんですが。前半速く入りすぎて、後半バテてしまいました」。それでも最後まで必死に水をかき、ゴールを目指した。
 先天性小児まひ。歩くのも困難だった。リハビリのために、両親は奈良選手に水泳を習わせた。小学1年のことだった。以来、弱音を吐きそうになる奈良選手を奈良選手を叱咤(しった)してきてくれた母、美恵子さんが2005年冬、病気で他界した。55歳だった。
 恵美子さんの遺影などは、あえて北京に持ってきていない。墓前にメダルを約束したりもしてこなかった。奈良選手がゆっくりと噛み締めるように話した。「きょうも母が来ていたんで。北京にず〜っと母がいるんで」。心の中で恵美子さんの声援を感じながら泳いでいた。
 アテネ大会で銅メダルを獲得してから、地元でも水泳に取り組む障害者も増えてきた。実は、今回の目標はメダルではない。「メダルを取ることもそうですけど、障害がある子でもあきらめなければこんなに輝けるんだということを伝えたい」と奈良選手。慕ってくれる小中学生たちに希望を与えるために、挑戦を続ける。

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