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2008年09月08日(月) 00時00分

第1回 爆笑問題さん読売新聞

 「yumiyoriな話」は、“ユーミン”こと松任谷由実さんが、各界の旬の人たちと対談する大型企画。今月から毎月第1土曜日にお届けします。第1回のゲストは、結成20周年を迎えた爆笑問題の二人。音楽とお笑いという異分野の顔合わせですが、表現活動に対する共通する思いがありました。(構成・清川仁)

音楽以外はしない

 松任谷(以下M) 爆笑問題って、ずーっと学生のノリ。私もなんですけど、私が学生で、お二人は予備校生みたい。向学心なのかなあ。

 太田(以下O) まだ受かってない感じですね。

  でも、素晴らしいこと。いつも伸びしろいっぱい。西高東低のお笑いの中で、東京っ子で孤軍奮闘して。お二人が(立川)談志さんや(ビート)たけしさんに緊張したように、若手から思われていると感じます?

  ないですね。「ファンでした」って言われればうれしいです。ただ、クッと上げられちゃうのはイヤ。

 田中(以下T) 司会は普通、若手に面白い話をさせて、つっこんで笑いを取らせる「回し」をする。僕らはそれがイヤで。

  誰よりも前に出たい。

  予備校生っぽいのは、“上”に行っちゃってないところがあるからかな。

  松任谷さんの歌ってたスキーとかサーフィンとか、「ああいう大学生になりたい」と思ってました。中島みゆきさんと二人が同時代にいたことがすごい。お互い意識してるのかなあと考えてた。

  作風があそこまで違うと意識はしないかな。

  みゆきさんに「蕎麦(そば)屋」っていう悲しくなるぐらい貧乏臭い歌があって。でも、すごく染みる歌で。で、松任谷さんの場合は絶対男におごらせてるイメージで、こんな歌ない。

  同時代に、優れている人がいると本当にラッキー。切磋琢磨(せっさたくま)できたり、表現を膨らましてもらえたり。

  僕ら「ザ・ベストテン」世代なんですよね。

  1度だけ出たんですよ。「守ってあげたい」で。テレビはいまだに超アガっちゃう。アガる自分も好きですけどね。それこそ、伸びしろ。

  松任谷由実のすごさは、本当にメジャー、ど真ん中ってことですよね。みんな、金もねえのにスキーやらされて(笑)。曲という、理屈じゃない面白みとして伝えられるのはうらやましい。僕らはどこまで行っても言葉の世界で。

  言葉こそど真ん中じゃないですか。

  だけど、もう1個何か欲しい。松任谷さんの「ボイジャー」が好きで、「人々を変えるものに人々は気づかない」という、そういうものを探してるのかもしれない。

  たけしさんもすごく好きって言ってくださったことがあって。どこか孤独を歌った詞が、お笑いの人に刺さるのかな。

  時事問題をちゃんと取り上げられるお笑いの人は、ほかにはあまりいないでしょう。

  本当はイソップ童話のように、寓話(ぐうわ)化したいんです。

  それには、田中さんの存在が大きいかも。ルックスも含め、おとぎ話的で。

  確かに(笑)。まあ、いかにも社会問題取り上げてますってところはヤボなんですよ。でも、テレビは短いところでやらないと変えられちゃう。

  フラストレーションをちっちゃいライブとかに求めるのは、面白くない。ガス抜きしないでギリギリでやってるから、爆笑さんの迫力があるんじゃないかしら。文化人にギリギリでならないところもすごい。

  文化人って、ギャラ安いんですよ。

  そういう問題じゃない!

  「太田総理」は気が付くと笑わせることを忘れて、「アーッ!!」って言ってる。文化人気取りって言われるし、僕もカッコ悪いと思う。芸人は笑わすことに専念するところに格好良さがある。皮肉りたい気持ちもあるけど、メッセージを込めることがメーンになると、お笑いじゃなくなっちゃう。

  チャリティーに対する私の考え方と近いかも。本気で現場に足を運んでる人たちを応援するのに、やっぱり自分の歌をやらないとね。

  すごく分かりますね。バラエティーしか出ないのは、何とか保とうとしてます。たまに、役者でどうかと声をかけられるけど、僕の場合、基本路線がわかんなくなっちゃうのが不安で。

  私も昔はよくドラマ出演とかの話はあったけれど、音楽以外は一切しないですしね。

放送に乗せてこそ芸

爆笑問題 太田光(右)と田中裕二(左)が1988年に結成。現在、「太田光の私が総理大臣になったら…秘書田中。」(日本テレビ)など、テレビ・ラジオ合わせて10本のレギュラー番組を持つ。2006年、芸術選奨文部科学大臣賞放送部門受賞。

  世の中が変わると、歌の世界でもこれは書けないなあ、ということも出てくる。

  僕らが始めたころは、昭和の終わりで自粛ムード。テレビはかなりやりにくい状況で、「放送禁止ライブ」みたいなのに一時期出てた。客も「テレビじゃ笑えねえ」っていうやつらばかり。だけど、テレビは、放送に乗っかる形にするまでの間が芸で、それに気が付いてからは逆に世界が広がった。だから、メジャーのすごさを感じた。

  この先世界はどうなっていくでしょうね。

  物価が上がってるけど、食べ物が容易に手に入らなくなったら怖い。腕っ節の強いやつに食料取られて、お金はあっても仕方ない状況になったら……。

  僕は楽天家で、温暖化も少子化も何とかなるかと思う。最終的にはみんなシャボン玉の中に入ってプカプカ浮いているような世界に。

  意味がわかんない。

  何となくイメージです。動物たちと……。

  でも、イメージは大事です(笑)。結局どんな時代でも、エッジにいるのがお笑いの格好良さだと思います。20周年すごいです、巨匠の道まっしぐらです。

  いやいや。

  僕らは予備校生ですから(笑)。

(撮影・関口寛人)

完全版はこちら    第2回は唐沢寿明さんです
プロフィル
松任谷由実  (まつとうや・ゆみ)
シンガー・ソングライター。1972年デビュー。
「卒業写真」など、長年愛され続ける曲を世に送り出す。90年のアルバム「天国のドア」は、日本人初の200万枚超えの売り上げを記録した。「松任谷由実・オフィシャルサイト」はこちら

http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/yumiyori/20080908yy01.htm