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2008年09月07日(日) 00時13分

<パキスタン>ザルダリ新大統領、米と民意の二つの圧力毎日新聞

 6日投票されたパキスタン大統領選で、下院第1党「パキスタン人民党」トップのアシフ・ザルダリ共同総裁が当選を決めた。しかし米国が対テロ戦争への一層の協力を求める圧力を強める一方で、国内ではこれに反発するイスラム武装勢力によるテロが頻発。クーデターで政権を奪取し軍を背景にしたムシャラフ前大統領に比べ、総選挙での勝利で権力の座についたザルダリ氏はより民意に配慮せざるを得ない。そのかじ取りによっては、米国の対テロ戦争にも影響が出る可能性もある。【ニューデリー栗田慎一、ワシントン小松健一】

 「(妻の)ブット氏をテロで失ったザルダリ氏とは、テロとの戦いで共通の利益がある」。米ホワイトハウスのペリーノ報道官は5日、そう語り、ザルダリ次期大統領がムシャラフ前大統領同様、対テロ戦争に全面的に協力するよう圧力をかけた。

 対テロ戦遂行にはパキスタンの安定が不可欠とみる米国にとって、イスラム原理主義勢力とのつながりが薄いザルダリ氏以外に支持できる有力政治家は見当たらず、ザルダリ氏を支援して政治基盤の安定を図りたい考えだ。

 だがパキスタン国内には、政権が対テロ戦へ協力すればするほど、国内の反米、反政府感情が高まりテロ行為が頻発するというジレンマがある。大統領選が行われた6日にも、北西部ペシャワル郊外でイスラム武装勢力によるとみられる自爆があり、少なくとも15人が死亡した。

 最大野党となるイスラム教徒連盟シャリフ派は、米軍部隊によるパキスタン領への越境攻撃についても、「主権侵害だ」と厳しい対応を求め、ザルダリ氏に揺さぶりをかける。

 米政府内には、ザルダリ氏がどこまで実効性のあるテロ対策を打ち出せるか、懐疑的な見方も根強い。米国はムシャラフ氏の後任として昨年11月就任したキヤニ陸軍参謀長との関係強化を図るなど、早くもザルダリ氏と距離を置く姿勢も示している。

 【ことば】パキスタンの大統領権限

 パキスタンは従来、首相が政治の実権を持ち大統領は象徴的存在だったが、ムシャラフ氏が大統領就任後、憲法を改正して強大な権限を持たせた。首相解任権のほか陸軍参謀長、最高裁長官の指名・解任権、国会下院解散権など。ムシャラフ氏の独裁姿勢の象徴として国民の反発を浴び、同氏が辞任すれば権限は再び首相に戻されるとみられていた。

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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080907-00000000-mai-int