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2008年09月07日(日) 21時18分

パラリンピック 母に誓った4連覇成らず 柔道・藤本選手毎日新聞

 【北京・石丸整】7日の北京パラリンピックの柔道男子66キロ級決勝。96年アトランタから4大会連続の金メダルを目指した藤本聡選手(33)=徳島市=は決勝でアルジェリアの選手に敗れた。惜しくも銀メダルに終わり、あおむけになり手で顔を覆ったまま動けなかった。「今回は命を懸けている」。母に誓った4連覇は成らなかった。

 2歳の時に視神経異常で左目がほとんど見えず、右目もぼんやりとしか見えないことが分かった。幼稚園の七夕の短冊に「めがみえるように」と書いた。「目が治ったらテレビは二つ見えるの」と母真佐美さん(57)に尋ねたこともある。両親はラーメン店の経営で忙しく、遊び場代わりにと5歳から柔道を始めた。

 中学1年の時に友達がふざけて投げた木の実が当たり左目は完全に見えなくなった。右目を頼りに柔道を続け、「柔道はケンカ。気持ちで負けたらダメや」とのめり込んだ。盲学校に通っていた96年、初出場のパラリンピックで優勝。徳島県立盲学校で理学療法の教諭となった後も連覇した。

 勝ち続けても「負けたらどうなるんだろう」と毎日1回は不安に襲われる。弱気をねじ伏せるため早めに減量に取り組み、4カ月で10キロ減らした。「金メダル第1号は自分」「五輪で野村忠宏選手が達成できなかった4連覇をする」と公言し、自らを追い込んだ。

 怖い物知らずで臨んだ過去3大会とは違う。来春、勤務先の盲学校の理学療法科がなくなる。身の振り方は決まっていない。不安とは逆に柔道を続ける意地は強まった。

 試合開始前、観客席で真佐美さんに「まかしとけ」と声を掛け握手をした。しかし決勝で敗退。

 表彰式後、藤本選手は「もうふっきれた。チャレンジャーとしてもう一度挑戦したい」と笑顔でメダルをかざした。真佐美さんは「頑張ったねと言いたい。本当に頑張ったから」とつぶやいた。

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