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2008年09月07日(日) 18時19分

露、北カフカス地方の独立機運を助長?グルジア紛争で不安定化産経新聞

 【モスクワ=遠藤良介】ロシアの「やわらかな下腹」と呼ばれる南部の北カフカス地方が、テロの続発や独立派の活発化など不安定化の兆しを見せ始めた。ロシアはグルジア紛争を受け、同国の親ロシア派地域、アブハジア自治共和国と南オセチア自治州の独立を承認したが、このことが、強権統治で押さえ込んできた露北カフカス地方の独立機運を今後、助長するとの見方が出ている。

 テロが続発するイングーシ共和国では、独立系インターネット・サイトを運営する著名ジャーナリストのエブロエフ氏が8月31日、空港から警察に連行され、その車両内で銃殺された。共和国ではこれを受けて数千人規模の抗議集会が発生。当局は2日にこれを強制排除したものの、反政権派は週明けから政権交代を求めて大規模行動を再開する考えを示している。

 反政権派指導者のハズビエフ氏は「人々はもうモスクワ(連邦中央)に期待することに疲れた。だからアブハジアや南オセチアと同様に独立を求める人々が大勢いる」と語った。同共和国では近年、テロや当局の関与を疑われる拉致事件が頻発しており、モスクワが送り込んだ連邦保安局(FSB)出身のジャジコフ共和国大統領への不満が鬱積(うっせき)している。

 ダゲスタン共和国でもテロや戦闘が多発しており、3日にはイスラム過激派に対抗する立場だった政権派ジャーナリストが何者かの銃撃を受けて死亡。4日にはロシア部隊とイスラム武装勢力が交戦となり、市民にも死者が出た。

 ロシアのメドベージェフ大統領はグルジア紛争をめぐり、「ロシアはカフカスの擁護者であったし、そうであり続ける」と述べた。しかし、両共和国では連邦政府による強権統治がほころびを見せ始めているといえる。著名人権活動家のポノマリョフ氏は「現状が続けば内戦に発展することもあり得る」と警告する。

 2度の独立紛争を経たチェチェン共和国は、独立派ゲリラから親露派に転じたカディロフ大統領の下で「安定」を回復したように見える。それでも、8月下旬にはロシア部隊に対する攻撃や自爆テロが相次ぎ発生。治安権限をめぐる連邦部隊とカディロフ派部隊の対立も絶えず、ロシアがカディロフ氏を統制し続けられるかも不透明だ。

 ロシアの日刊紙、独立新聞は「ロシアが(長年)アブハジアや南オセチアの独立を承認しなかったことには理由があった。民族自決の原則は、連邦の存続と両立しないからだ」と指摘した。カフカス情勢に詳しい観測筋も「ロシアによる両地域の独立承認は、新たな悲劇をもたらし、それは長期的なものとなるだろう」と話している。

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