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2008年09月06日(土) 23時44分

<パラリンピック>支え合う姿見せたい…旗手の鈴木徹選手毎日新聞

 【北京・石丸整】3回目の出場となる北京パラリンピック開会式。陸上走り高跳びの鈴木徹選手(28)は競技場を義足で一歩一歩踏みしめた。「自分だけ勝てばいいと思った過去2回とは違う。障害者が支え合って走る姿を見せたい」。日の丸を手に選手団の先頭で登場。観客席に手を振り、後ろに続く選手を気遣いながらゆっくり歩いた。

 山梨市出身。駿台甲府高校時代、ハンドボールで国体3位になった。筑波大へのスポーツ推薦入学が決まっていた99年2月、自動車事故を起こし、右足を失い義足になった。大学を1年間休学してリハビリをしていた時、走り高跳びを始めた。

 メダルを狙い臨んだ04年アテネ大会は、自己記録すら更新できず6位に終わった。帰国後、大学学内誌に「他の選手が夜遅くまでテレビを見ていて、平静さを保つのが大変だった」と書いた。力が出せず失敗したことを他人のせいにしていた。

 アテネ大会直後、事故の際に看病してくれた看護師の麻美さん(32)と結婚。資金を提供してくれたスポンサー企業との契約が切れたため、宅配便を仕分けするアルバイトや講演で生計を立てた。間もなく長男勇悟くん(1)が誕生。「いつか『義足を隠してほしい』と言い出すだろうか」。自分のことばかりを考え意固地になっていた自分に気付いた。

 北京到着後、他の選手とバトンリレーの練習をした。自身の競技には関係ないが「自分だけではない気がする」と言う。車椅子を使わない立位グループで最年長。リーダーシップを期待され旗手に指名された。選手村ではできるだけ声を掛け、みんなで食事をする。「全員が金メダルを取れるわけではない。勝てなくても、その結果を受け入れて他の選手を称賛しようと思う」

 06年に世界歴代3位となる2メートルを跳んだ。義足のハイジャンパーとしては世界一だ。決勝は14日。前回までとは違う大会になる。

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