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2008年09月06日(土) 15時28分

パラリンピック今晩開会式、中国の障害者芸術団も登場読売新聞

 【北京=小島剛】障害者スポーツの祭典「北京パラリンピック」が今夜開幕する。

 国家体育場(鳥の巣)で行われる開会式は北京五輪の開会式で助監督を務めた舞台演出家の張継鋼氏がプロデュース。耳の不自由な舞踏家たちの「千手観音」のパフォーマンスなどで有名な「中国障害者芸術団」も出演し、一糸乱れぬ踊りを通じて人間の限りない可能性を世界中に伝える。

 北京市朝陽区のろう学校の一室で、黒いTシャツ姿の若い男女が踊りの練習に励んでいた。音楽もない、しんと静まりかえった空間。指揮者役の女性スタッフの身ぶりを見ながら、障害者芸術団のメンバーが一心に千手観音を演じていた。

 障害者芸術団は「静寂の中に旋律を感じ、暗闇の中に光を味わい、不完全の中に完璧(かんぺき)を求める」がモットー。目の見えないピアニストや歌手、耳や手足が不自由なダンサーなどが舞踊やミュージカル、京劇などを演じる。

 芸術団の団長、タイ・リーファーさん(31)は2歳の時に高熱を出して注射を受けた際、薬の副作用で聴覚を失った。幼稚園で友達と音あての遊びをしているとき、自分がほかの子と違うことに初めて気づき、大きなショックを受けた。

 7歳の時、ろう学校のリズム科の授業で、床から伝わる太鼓の振動を足で感じた。「自分の心を表現する美しい世界を見つけた」と、タイさんは舞踏の世界にのめり込んだ。

 踊りのための白い靴が欲しかったが、母親はタイさんの治療で病院に付き添う必要から仕事を辞め、父親がわずかな月収で一家4人を養っていたため、親にねだることもできなかった。

 インテリアを学ぶために湖北省の芸術大学に進学。講義は聴き取れないため教師の口の動きを必死に見つめ、板書を写した。その間も踊りへの情熱は薄れることなく、障害者芸術団の中心メンバーとして海外公演もこなすようになった。

 芸術団は1987年の発足以来、40以上の国で公演し、アテネパラリンピックの閉会式で「千手観音」を披露、その名を世界中に知られるようになった。翌年の旧正月では、中国国営テレビの番組で最も人気のある出し物として表彰された。

 「私たちのパフォーマンスを通じて、障害者の素晴らしい力を見てもらいたい」。タイさんはそんな思いで今晩の開会式に臨む。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080906-00000034-yom-spo