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2008年09月05日(金) 13時17分

NPO法人で働く若者「低賃金でも楽しい」 給与、労働条件…厳しい側面も産経新聞

 特定非営利活動促進法が施行されて12月で10周年。内閣府の統計によると、認証を受けたNPO法人(以下NPO)は約3万5000団体に上る。企業の雇用環境が厳しく、ニートやフリーターも多い状況では、NPOで働きたいと考える若者は今後、さらに増えると予想されている。NPOの課題を探った。(武部由香里)

 NPOで働く若者は、企業で正社員として就職している同世代よりも低収入だが、仕事内容への評価が高い−。こんな調査結果を、第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部副主任研究員の北村安樹子さんが公表した。調査は、NPOで働く20〜39歳の男女313人と、企業で働く2128人に行った。

 結果は、NPO従事者の8割が活動を通じて収入を得ており、無給の人も含めた平均年収は約160万円。年収300万円未満の人が3分の2以上を占めた。一方、仕事の評価は「内容がおもしろい」(91.7%)、「能力がいかせる」(86.8%)と多くの人が満足している。

 この結果は、企業で働く社員と比べ収入面では低いが、仕事に対する評価は高い。また、アルバイトなど非正規社員と比べると収入も仕事に対する評価も高い。

 ただ、若者を有給で雇用できるNPOは事業規模が大きいところにほぼ限られている。北村さんは「企業ではNPOのように刺激的でおもしろい仕事にかかわれる機会が少ない。しかし、若者を雇用する力があるNPOは多くはなく、雇用しても高い給与は払えないのが現状だ」と指摘する。

 全国に先駆けてNPOの支援を行ってきた大阪NPOセンター(大阪市)の山田裕子事務局長は「事業体としてのNPOは体質がまだ弱い。そのため、雇用に関しては、従事者の生活保障ができるほどは成熟していないといえる」と話す。

 同センターでは、各NPOにしっかりとした基盤作りをしてもらおうと、ネットワーク作りや人材育成のほか、相談事業や経営コンサルティングを行うなど、NPOが苦手とするマネジメントのサポートも続けている。また、資金支援を行うファンドも設立した。

 ところが、こうした体質強化を進めても、「給与や育児休業など労働条件の改善はすぐにはできない」(山田事務局長)のが現状だという。そのため、NPOで働く人は自分なりの新しいライフスタイルを持つことも必要になる。実際、夫婦でNPOで働く家庭や、妻が企業の正社員で夫がNPOのスタッフ、という家庭も多くなっている。

 北村さんは「NPOが若者の雇用の受け皿になるには経済基盤の強化が不可欠だが、もう一つの鍵は若い世代の男女観にある。収入は男、家族のケアと地域(社会)活動は女という役割分担に変化が生まれれば、NPOで働くことはワークライフバランスを実現する若い家族の新たな生き方になりうる」と期待している。

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