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2008年09月05日(金) 12時00分

「影の動き方」を分析し、上空から人物特定するソフトWIRED VISION

上空から撮影した影の動きを分析して歩き方の特徴から人物を識別する、新しいソフトウェアが登場した。

この手法は米航空宇宙局(NASA)ジェット推進研究所(JPL)のエンジニアであるAdrian Stoica氏が開発したもので、『New Scientist』誌に紹介されている。

このソフトを使えば、上空からの偵察とスパイ衛星に長年付きまとっていた問題の1つを解決できる。それは、頭頂部と肩しか見えない時にどうやって人物を認識するかという問題だ。

映画『ユージュアル・サスペクツ』では、男優のケビン・スペイシー演じる登場人物の歩き方が、映画の謎を解く鍵の役割を果たしたが、実際のところ、歩き方の特徴を隠すのは難しい。だからこそ、この手法は非常に強力なのだ。実際、人の歩き方をバイオメトリクス認証に使う研究は、各所で行なわれている。

8月に英国で開催されたセキュリティー会議の席上で、Stoica氏は、影を利用することで、上空からでも歩幅と歩くリズムを読み取って人物を識別できると説明している。Stoica氏は、動画から影だけを取り出し、時間帯やカメラアングルを考慮して、長く伸びた影や短い影を修正するソフトウェアを開発した。

Stoica氏は、6階建てのビルの上から撮影したビデオでこのソフトウェアをテストした。その結果、影から、分析に利用可能な、被写体の歩き方に関するデータを収集することに成功したという。

ただし、6階からの撮影に関してこのソフトがうまく動いたからといって、低地球軌道を周回する衛星でも同じ手法が使えるかというと、おそらく無理があるだろう。

最も優れた商業用の低軌道衛星(『Google Maps』の精度向上のために9月7日に打ち上げられる予定の『GeoEye』)は、解像度が41センチだ。

一般に知られている中で最も優れた軍用スパイ衛星は、10センチ以上の物体を識別できる(ただし、さらに性能が高い衛星が秘密裏に存在する可能性もある)。

また、GeoEyeが撮影できるのは、Stoica氏が使用していたようなビデオ映像ではなく、静止画像のみだ。動画を撮るには、さらに軌道が高い静止軌道衛星を使わなくてはいけない可能性があるが、高度が高すぎると、影の分析に必要な解像度は得られないだろうという専門家もいる。

一方、偵察用の無人航空機(UAV)ならば、うまくいく可能性がある。

いずれにしても、快晴の日の外出時には、[歩き方を読み取られないように]スキップの練習をしなければ、という気分になる話だ。

New Scientist誌の「影の分析で、歩き方からテロリストの特定が可能に」を参照した。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080905-00000003-wvn-sci