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2008年09月05日(金) 21時32分

韓国、今度は仏教界が政権に反旗 「キリスト教偏重」と反発産経新聞

 【ソウル=黒田勝弘】韓国の李明博政権と仏教界が“宗教差別”をめぐって対立を深めている。仏教界は李政権が大統領をはじめキリスト教に偏重していると反発し、大きな政治問題になっている。仏教界は李大統領に謝罪や是正策を要求し、全国的に集会やデモを繰り広げ、李政権にとっては新たな反政府圧力になっている。
 李政権は政府・与党幹部が仏教界首脳と会い説得に努める一方、「宗教差別禁止法案」を準備。さらに李大統領が来週予定されている「国民とのテレビ対話」で“謝罪”の意を表明する方針だ。
 今回、仏教界の反乱は、米国産牛肉輸入反対の不法デモで手配された反政府活動家がソウル市内の寺に逃げ込んだ際、警察が寺から出てきた仏教界首脳の乗用車を“捜索”したことがきっかけになっている。これに加え警察庁長官がキリスト教関係のポスターに登場するなどキリスト教との親密ぶりも明るみに出た。
 仏教界は警察庁長官の謝罪や解任を要求。さらに大統領秘書官など政権要人たちのキリスト教偏重の発言や、教育・行政などでのキリスト教優遇を“宗教差別”と非難し、改善を強く要求している。
 人口約5000万人の韓国で仏教徒は1000万人以上だが、キリスト教徒は新旧合わせ1400万人(政府統計)になる。キリスト教徒は上層階級や各界の指導層に多く、社会的に影響力が強い。李承晩初代大統領から李明博現大統領まで歴代大統領はキリスト教徒が圧倒的だ。
 しかも韓国キリスト教はアラブ圏など近年の海外活動でも明らかなように、仏教界に比べ日常的に積極的、攻勢的できわめて目立つ存在だ。李政権の場合、李大統領が熱心なキリスト教徒ということもあって「政権人脈は教会人脈」とか「キリスト教共和国を目指している」といった皮肉も聞かれるほどだ。
 このため仏教界の不満は強く、最近の“捜索事件”でも「枢機卿や有名牧師の乗用車なら決して捜索などしないはず」とし大反撃に乗り出したというわけだ。もともと保守的だった仏教界にも近年、韓国社会の流れを反映し左翼的・革新的な反政府派が増えているとの声もある。
 李政権は春以来、大規模な反政府運動が続いた米国産牛肉輸入問題が一段落し、最近の北京五輪での韓国躍進で世論がわく中、低迷していた支持率が回復の兆しを見せていた。
 しかし仏教界の反乱で再び支持率はダウンしつつある。李大統領としては韓国最大の祭日「秋夕(中秋節)」の連休が始まる来週末前後までに何とか仏教界と和解し、支持率上昇につなげたいところだ。

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