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2008年09月05日(金) 00時00分

Yahoo! JAPANが広告新サービス読売新聞


新サービスの発表会見に臨むヤフーの井上社長

 ヤフー・ジャパンがインターネット広告の新サービスを発表した。ユーザーが閲覧中のページの内容と、当人の興味や関心事項を組み合わせ、最適な広告を表示する仕組みで、「考え方としては世界初の広告商品」(井上雅博社長)。買収騒動で揺れる米ヤフーとは裏腹に、日本法人の意気軒高ぶりを見せつけた格好だ。

ユーザーの興味や関心事にも連動

 ヤフーが7月17日、クリック課金型テキスト広告の新サービス「インタレストマッチ」を今秋から提供開始すると発表した。最大のポイントは「興味・関心」を取り込んだことだ。ユーザーの興味・関心を知るためには、そのユーザーが現在閲覧しているページに関する情報以外に、過去どのようなページを閲覧したか、また直近の検索キーワードなどを基に総合的に判断する必要がある。

 新サービスでは、ユーザーが閲覧中のページの内容と過去の閲覧履歴を組み合わせるとともに、都道府県など配信地域や性別・年代を絞り込み、配信スケジュールの時間指定など複数の要素を加味。これによって、ユーザー一人ひとりに最適な広告を表示することができるため、クリック率が上がり、広告収益を引き上げられるというわけだ。

 例えば、あるユーザーが数週間前に国内旅行関連ページを閲覧し、数日前に沖縄に関するページを閲覧。現在はサッカー関連の記事を閲覧していたとすると、そのサッカー関連記事の周囲に、サッカーグッズの広告や沖縄旅行の広告、さらに国内旅行の広告が表示される、といった具合だ。

 ヤフーはこの手法によって、同社が運営する「ヤフー・ジャパン」サイトの月間ページ閲覧数およそ400億ページビュー(PV)の半分に相当する200億PVに広告を配信するという。さらにサービス開始1か月後をめどに、携帯電話への対応も開始する予定だ。

国内だけでなく世界も視野に

 井上社長は記者会見で、新サービスの潜在市場規模について次のように語った。

「インタレストマッチの潜在市場は、検索連動広告と同等の規模があると見ている。検索の精度は、検索連動広告の方が10倍高いかもしれない。だが、ヤフー・ジャパンサイトでは検索以外の利用が全体の9割以上あるので、インタレストマッチ向けPVの在庫は検索連動広告の10倍以上あることになる。これらを掛け合わせると同等の規模になる」

 そのうえで同社長は、「インタレストマッチは、検索以外にも幅広いサービスを展開しているヤフーだからこそ生かせる広告商品だ」と強調。さらに、「日本でうまくいけば海外展開も検討したい。そういう要望が(各国のヤフー現地法人から)出てくると思う」との期待をにじませ、買収騒動で揺れる米ヤフーを尻目に、日本法人の充実・好調ぶりを示してみせた。

 ヤフーは昨年9月、検索連動広告「スポンサードサーチ」を提供し、日本の検索連動広告市場を牽引していたオーバーチュアを100%子会社化。さらに、コンテンツマッチ広告システムを独自に開発して05年10月からサービスを提供していたブレイナーも子会社化し、両社の技術と営業・運用ノウハウを集約していた。

 実は、ヤフー日本法人には米ヤフーが約33%出資している以上に、ソフトバンクも約40%を出資していることから、米ヤフーに対して独立性が高い。しかも、検索などのサービス利用者数では日米の構図が違っており、日本ではヤフーがグーグルをリードしている。

 とはいえ、グローバルに通用するヤフーブランドを維持・成長させていきたいという思いは同じだろう。井上社長が今回の新サービスの海外展開に言及したのも、その現れだと受け取れる。

 そう考えると、とかくIT分野では“日本発”の技術・サービスが乏しいといわれる中、今回のような発信形態があってもいいのではないか。ヤフー日本法人の新たなチャレンジに注目したい。(フリージャーナリスト・松岡功/2008年8月24日発売「YOMIURI PC」2008年10月号から)

http://www.yomiuri.co.jp/net/frompc/20080905nt09.htm