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2008年09月04日(木) 23時01分

【福田退陣】4人の表情 雰囲気一変 漂う緊張感産経新聞

 ■与謝野馨氏
 「与謝野君は総裁候補の中では割とインテリで万能の力を持っておる。このままでは非常に物寂しい総裁選になると思っていたので立候補は非常によい。大いに激励しておいたよ」
 4日昼、与謝野経済財政担当相から出馬の報告を受けた恩師の中曽根康弘元首相は満足そうにほほ笑んだ。確かにこれまで「俗世界の話はしない」と出馬を否定してきた与謝野氏が態度を一転させたことで党内の雰囲気は大きく変わりつつある。
 学究肌で人当たりのよい与謝野氏は派閥横断的に人気が高い。タカ派色の強い麻生太郎幹事長や、小池百合子元防衛相を推す経済成長重視の「上げ潮派」を嫌う勢力が雪崩を打つ可能性もあり、最有力候補の麻生氏もウカウカできない情勢となった。
 与謝野氏の出馬を聞いた麻生氏は「いいことなんじゃないか?」と余裕を見せたが、与謝野氏との連携をひそかに期待していたこともあり心境は複雑のようだ。
 中曽根氏と面談後、与謝野氏はBS番組に出演。司会者に「時の人ですね」と水を向けられると「無投票で党の代表を選ぶのは面倒くさくないが、党が何を考えているか国民に知っていただく努力をする責任がある」と決意をにじませた。
 ただ、与謝野氏は平成18年秋に咽頭(いんとう)がんの手術をしており健康不安はつきまとう。年内解散の見方が強まる中で「選挙の顔になりえるのか」(中堅)との声も上がる。
 ■麻生太郎氏
 「次期政権に要望のある人はどうぞ」
 4日早朝、都内で開かれた財界関係者との勉強会に出席した麻生氏は司会者にこう紹介され、照れ笑いを浮かべた。この会合に与謝野氏も出席していたが、遅れてきた麻生氏と入れ違いに退席しており、ニアミスは逃れた形だ。
 麻生氏は「複眼的な視点で日本の国家経営を考えないといけない」と述べ、定年制延長や投資促進など政権構想に自信を見せたが、出席者からは「世の中の空気は自民党にとって甘いものではない」と厳しい声も飛び出した。
 まだ麻生氏は幹事長を辞職していないため、表だった活動は控えているが、陣営では選対本部用に都内のホテルを予約、8日に党本部で出馬会見する方向で着々と準備を進める。
 先の総裁選で推薦人となった菅義偉元総務相(古賀派)、甘利明前経産相(山崎派)、鳩山邦夫前法相(津島派)らもすでに水面下で多数派工作を開始。与謝野氏の出馬により緊張感が広がったが「小池氏と一騎打ちとなり守旧派のレッテルを張られずに済む」と歓迎する声もある。
 ■小池百合子氏
 「昨夜はよく寝ました。ちょっと環境が変わってきたかな…」
 推薦人確保にメドを付けた小池氏は4日午前10時、晴れやかな笑顔で党本部に姿を現した。かつて一度しか顔を見せたことがなかった「資産効果で国民を豊かにする議員連盟」(会長・山本有二元金融担当相)の勉強会にフル出席した。
 だが、所属派閥の町村派は一部の若手・中堅を除いて冷ややかだ。小池氏は猪口邦子、佐藤ゆかり両衆院議員(いずれも無派閥)と結成した「TPL(トーキョー・プロジェクツ・オブ・バイ・フォー・レディース)」を中心に改革派に支持を訴える考えだ。
 後見人の小泉純一郎元首相はいまも沈黙を守ったまま。4日夕、記者団に出馬の意向を再度問われ、「調整中。でもいい感じ。そう迫らないでよ」。
 ■石原伸晃氏
 「ぜひ総裁選でしゃべる機会を得られるように不退転の覚悟で取り組みたい」
 石原氏は4日朝、東京都杉並区の上井草駅で10人ほどの立ち見客を前に出馬の意向を表明した。
 だが、所属の山崎派会長、山崎拓元副総裁の態度はあいまいなまま。「石原氏を支持すれば派を上げて総裁選をしないといけないが分裂含みとなる」(中堅)からだ。
 父の石原慎太郎東京都知事は石原氏の出馬を「冗談でしょ」と一(いつ)蹴(しゆう)。記者団に「父親に相談したか」と問われると鼻で笑ってこう答えた。
 「新宿(都庁)の頑固おやじに話すと森(喜朗元首相)擁立になってしまう」

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