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2008年09月04日(木) 12時23分

【法廷から】女優へのステップだったAV…挫折してダンプでわいせつ撮影産経新聞

 東京・渋谷で停車中のダンプカーの荷台でアダルトビデオ(AV)の撮影をしたとして、公然わいせつなどの罪に問われた元AV女優の被告(30)に対する初公判を3日、東京地裁で傍聴した。
 黒の長袖シャツに黒のタイトスカート姿の被告が法廷に姿を見せた。スラッとした長身の被告は、静かに被告人席に着いた。
 起訴状などによると、被告は昨年7月20日午後2時50分〜午後3時10分、東京・渋谷に停車したダンプカーの荷台で、撮影のために裸になってAV男優と性交した。荷台の側面はシートに覆われていたが、上部にはシートがかかっておらず、近隣ビルの上階からは、性交の様子が完全に見える状態だった。
 また、公然わいせつ事件にともなう家宅捜索で、被告の自宅から大麻やコカインが発見されたため、大麻取締法違反と麻薬等取締法違反の罪でも起訴された。被告は、起訴事実をすべて認めた。
 事件では、相手の男優や監督らスタッフも立件され、東京地裁で前日に初公判が開かれている。
 証言台には、この日のために鹿児島・奄美大島から上京したという被告の父が情状証人として立った。
 被告は、父が神奈川で仕事をしているときに生まれているが、両親らは、約8年前に奄美大島に戻って生活しているのだという。被告の家族は、事件が発覚するまで、被告がAV女優をしていることを知らなかったようだ。
 弁護人「AV女優をしていることは、知っていましたか」
 父「以前、写真撮影の仕事(モデル)をしていると聞きました。○○さん(法廷では有名写真家の実名)のモデルとして、グアムで撮影しているとか…。まさか、そういうことをしているとは」
 弁護人「奥さんは、事件のことを聞いてどんな様子でしたか」
 父「憔悴(しょうすい)しきっています」
 被告の父は、仕事を辞めさせて、娘を奄美大島に連れて帰り、「自分の一生をかけて更生させる」と誓った。父が証言を続ける中、被告は持っているハンカチで涙をぬぐい続けていた。この後、検察官は、今後の被告の生活面で、ある心配を口にした。
 検察官「奄美大島は地方で、人間関係が緊密ですよね。娘さんの事件を、みんなが知っているのではないですか」
 父「まわりは誰も知らないと思います」
 検察官「というのも、娘さんの事件のことをあえて言うことはないと思いますが、周りでうわさになって、娘さんが居づらくなるのではと。大変ではありませんか」
 父「本人がやったことの代償は大きいと思っています」
 続いて、被告人質問が始まった。撮影を行った監督は、自身の初公判で「セックスというのは、平和の象徴みたいな行為」などと述べ、今回の撮影の芸術的意義を訴えていた。しかし、被告は、監督の考えに共感することもなく、実は嫌々ながら撮影を行っていたようだ。被告は撮影に応じた理由を説明した。
 弁護人「ダンプカーの上での撮影だというのは、いつ知りましたか」
 被告「当日です」
 弁護人「どのような経緯で説明を受けましたか」
 被告「(撮影直前の)メーク中に監督から聞きました」
 弁護人「説明を受けて、違法な行為だということは認識していましたか」
 被告「はい」
 弁護人「それではなぜ、断らなかったのですか」
 被告「(直前に)断ってしまうと、違約金を取られます。今後、自分の仕事にも影響が出ると考えました」
 弁護人「前もって内容を確認していたら、撮影をしていましたか」
 被告「事務所と相談して、断ることができたと思います」
 弁護人「AVというのはぶっつけ本番なのですか」
 被告「ほかのメーカーは、撮影の1週間くらい前に打ち合わせをしますが、ここのメーカーは何もなしに撮影を行います」
 そもそもなぜAV女優になったのか、弁護人は被告に問いかけた。被告にはささやかな夢があったという。
 弁護人「あなたがAV女優になったのは、いつごろですか」
 被告「3年くらい前です」
 弁護人「AV女優になったのが遅いですよね。なぜその年でなったのですか」
 被告「小さいころから、女優やモデルにあこがれていました。AVから女優やタレントになる人もいます。そのステップとしてAVを始めました」
 弁護人「挫折してしまいましたね」
 被告「はい」
 弁護人の質問に、被告はうなだれた。被告は「自分の弱さで、大麻やコカインに手を出してしまった」と反省の弁を述べ、薬物からの脱却も誓った。
 検察側は、「DVD販売による利益を目的として、公然とわいせつ行為を行った」として、懲役2年6月を求刑。弁護側は執行猶予付きの寛大な判決を求めた。
 もう、AV業界からは足を洗うという被告。夢をかなえる手段は、人それぞれだ。しかし、女優への道をあきらめた時点で別の目標をみつけていれば、薬物や公然わいせつといった犯罪に手を染めることは、なかったのではないだろうか。
 判決は9月11日に言い渡される。(大泉晋之助)

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