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2008年09月04日(木) 06時30分

公金の最前線で…謝罪8度目、変わらぬ隠蔽体質 大阪市裏金問題産経新聞

 3度に及ぶ全庁調査をくぐり抜けた「裏金」が旧税務担当で再び浮上した大阪市。3日に会見した平松邦夫市長は、「公金を扱う最前線である税務の職員が再三の呼びかけに応じなかったことは言語道断。一番重い処分規定で対応する」と憤りをあらわにした。しかし、今回の調査結果では職員間の証言の食い違いで事実の確定に至らない部分もあった。裏金を生み出した背景が明らかにならないままの厳罰方針に、職員からは「現役職員だけの『とかげのしっぽ切り』だ」との反発も出ている。

■8回目の謝罪会見

 「本当に申し訳ありませんでした」。2月4日の問題発覚以降、平松市長が裏金関連の謝罪会見に臨むのは8回目。繰り返し示された市役所の隠蔽(いんぺい)体質に平松市長は「うみを出し切りたいと言い続けてきたのに…。失望感を味わっている」と半ばあきれた表情を見せた。

 会見のなかでは平松市長は「遺憾だ」「残念」と連発。それには理由がある。

 市の裏金調査は3度の全庁調査を含め今年2月から半年かかっている。当初、東住吉区役所の選挙関係部署で不正にプールした金があると市公正職務審査委員会からの勧告を受けて始まったが、途中、「預け金」が発覚したり、初めは否定していた経済局で約1億6000万円の裏金が見つかるなど、“終わりのない”調査になっている。

 新たな裏金が見つかる度に平松市長が頭を下げる場面が続く。

■証言は平行線のまま

 問題は、調査そのものにもある。今回、税務担当の裏金問題が最初に発覚した東住吉区役所は、最後まで関係する職員の証言が食い違い、事実関係の確定もできなかった。

 同区の裏金の中心人物とされている総務担当課長は、市の調査では、今年2月に裏金の存在を申告しようとしたかつての職員を呼び出し、市の全庁調査に申告しないよう圧力をかけたり、7月まで市に裏金の可能性のある金の存在を報告せず、報告した際も実際に昨年12月に見つかっていたのを今年3月と虚偽報告をしたとしている。

 ところが、この担当課長は「圧力はかけていない」と証言し、虚偽報告ではなく「勘違い」という。

 この総務担当課長は昨年10月に選挙関連の裏金を市に報告し、問題を明るみに出している。今年7月まで裏金の報告をしなかった理由を「部下のだれも裏金情報を上げなかった」という。証言が食い違ったままでの調査終了に、この課長は「こんな幕引きでは市民に申し訳ない。明らかにならなかった裏金を捻出(ねんしゅつ)したり引き継いだりした職員も、きちんと処分されるべきだ」と話している。

■なぜこんな裏金が…

 なぜ大阪市は裏金が次々と出てくるのか。大きな要素は2つある。一つは5−10年前までは裏金が“通常業務”だったことだ。この時代は、プール金、預け金などの不適正資金を便利に支出できる金として捻出していた。

 これについて市公正職務審査委の委員長、辻公雄弁護士は「公金は誰のものかは徹底していなかったということだ。そこにある金は、行政のもので、主権者は市民という認識がなかったのだろう。それが最近になって変遷してきたのだと思う」と話した。

 もう一つは「隠蔽体質」。一連の調査で全庁調査や聞き取り調査、自己申告調査など手法を変えてさまざまに行われたが、今回の税務担当の裏金はいずれもくぐり抜けた。関係している職員は1人や2人ではなく、数は数十人にのぼる。しかし、全員がそろって口をつぐんだことは「黙っていれば時がすぎる」と思っていたとしか考えられない。この体質はいまなお残っている。

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