記事登録
2008年09月03日(水) 12時00分

今夏の売上は好調:映画業界は不況にもファイル交換にも強い?WIRED VISION

理屈から言えば、もはや映画館に行く理由はあまりない。ホームシアターは手の届く価格になってきているし、映画館での公開から、DVDやデジタル版のリリースまでの間隔は縮まりつつある。

また、最近はデジタル・ストリーミングやダウンロード・サービスの利用しやすさはかなり向上している。さらに、ガソリン価格やチケット代、そしてポップコーンの値段は高くなっており、映画館で映画を観るほうが高くつくのは言うまでもない。

したがって、ハリウッドの映画産業が景気後退の影響を受ける恐れがあると示唆する新しい調査結果も、それほど衝撃的というわけではない。

『Wall Street Journal』紙の記事は、市場調査会社の米Interpret社が実施したこの調査について、次のように報じている。「18歳から54歳の米国人消費者1000人を対象に調査を行なったところ、52%の回答者が、映画館で映画を観る回数が減ったと答えた。スポーツ観戦に行く回数が減ったと答えた回答者は35%で、映画館で観る回数が減った人の割合は、この数字を大きく上回ることが明らかになった」

驚くべきなのは、映画産業が落ち込む兆候を示していないということだ。実際のところ、今夏のチケット売上は、2年連続で新記録を達成する可能性がある。

[別の英文記事が紹介している、アナリストJeff Bock氏の発言によると、正確なデータは9月4日のレイバーデー祝日を含む週が終わらないと出ないが、推測では3カ月の売上げは42億ドルで、前年同期と比べて1%多いという。

なお、今夏でもっとも興行成績が良かったのは『The Dark Knight』(バットマンシリーズ、4億9100万ドル) 、次に『Iron Man』(アイアンマン、3億1700万ドル)で、総売上げのうち約33%が、コミックブックをもとにした映画から来ているという]

「映画産業は落ち込む兆候を示していない」という現象はどう説明されるのだろうか。ある程度は、インフレがこの現象の説明に役立つだろう(価格の上昇により、チケットの総売上が増加しているということだ)。しかし、好調な観客動員数についての理由にはならない。

「チケットの売上(今夏の総売上)は伸びており、観客動員数も好調だ。最終的に、この夏の動員数は昨年を上回るかもしれないと思う。そうなる見込みはついている」と、全米映画館協会(National Association of Theater Owners:NATO)のメディアおよび調査担当ディレクターを務めるPatrick Corcoran氏は述べている。[8月29日付けの別の英文記事によると、観客数は前年同期比で5%ほど低い見込みという]

もし映画館を訪れる回数が減っているとしたら、どのようにして観客動員数が伸びるのだろうか? たぶん、実際には映画館に行く回数は減っていないのだろう。

これまでの常識によると、概して映画は不況に強い産業だ。過去のデータもこのことを裏付けている。Corcoran氏は、1965年以降、7回の不況年のうち5回において、チケット売上は増加したと説明し、次のように語った。

「インフレがこの現象の一要因であることは間違いない。チケット価格は1977年に平均2.23ドルだったので、インフレ率を考慮すれば現在のおよそ8.03ドルに相当する。ところが、(2008年の)半ばで平均価格は7.12ドルだ。つまり、現在のチケット価格は、インフレ率で調整すると比較的安いということになる」

また、映画館に破滅的影響を与える技術の脅威という話も、根拠のないでたらめだとCorcoran氏は考えている。同氏は、ビデオデッキが主流になった1970年代末にも、DVDプレーヤーが普及した1990年代末にも、実際はチケットの総売上が急成長したという事実を指摘する。

「観客動員数は、1980年代半ばを通じて上昇し、VHSが発売された後、安定期に入った」とCorcoran氏は言う。同様に、DVD発売後の1998年に、観客動員数は急上昇したという。

「ホーム・エンターテインメントと映画館へ行くことは相補的な関係にあり、互いに補い合っているのだ」と、Corcoran氏は述べた。

[過去記事では、「近年の映画産業の成功の理由は、大画面での鑑賞に値する作品を作ってきたということにつきる」と分析している。『スパイダーマン』や『スターウォーズ』など、「特殊効果やサラウンド音声が盛り込まれた壮大な筋書きの映画は、テレビやコンピューターの画面では魅力が損なわれる」ため、人々は映画館に直接行く。映画館での観客を確保する一方で、映画産業はDVDソフトに、劇場版とは別のエンディングやインタビュー、映画情報などを盛り込んで販売することで、相補的な売上げを確保しているという。

一方、別の英文記事によると、インドの映画産業は今年に入って苦戦している。チケットの値段が一般のインド人にとって高すぎるようになったのが理由という]

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080903-00000002-wvn-sci