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2008年09月03日(水) 20時47分

福田首相「ぶら下がり」依然拒否…説明責任放棄許されぬ読売新聞

 福田首相が、原則として1日2回、立ったまま記者団の質問に答えてきた定例の「ぶら下がり取材」を、退陣表明以降、拒否している。

 2日に続き、3日も取材に応じなかった。こうした対応は、国民への説明責任放棄で許されない。

 秘書官を通じ、報道各社でつくる内閣記者会に伝えられた拒否の理由は、「辞任表明した以上、無用な雑音を立てるべきではない」というものだ。首相側は、国内外で大規模な事件・事故が発生した場合などは柔軟に対応する、としているが、残任期間中は基本的に取材に応じない構えだ。

 記者会側は、従来通り取材に応じるよう要請を重ねているが、3日には秘書官から、「考えは変わらない。映像、記事にかかわらず、取材は受けたくない」「自民党総裁選の質問をするというなら、同じ理由で取材に応じない」との意向が伝達された。

 首相としては、取材に応じれば、退陣経緯のみならず、自民党の麻生幹事長への「政権禅譲密約説」の真相や、自民党総裁選に絡む人物評などを聞き出そうとするマスコミの好餌(こうじ)となり、発言が面白おかしく取り上げられ、関係者に迷惑をかける−−との思いがあるのだろう。

 首相は、老子の「光而不耀(光ありてかがやかさず=聖人は光があっても外には出さない)」を座右の銘とする。政策課題を黙々とこなし、支持率低迷も「分かってくれる人が分かってくれればいい」といった面があった。しかし、それが一方で、メッセージ発信力の欠如と批判されてきた。

 「ぶら下がり取材」は、国の最高権力者である首相の考えを、報道各社が直接取材し、国民に伝えるための貴重な場だ。かつては、首相は移動中も歩きながら記者の質問に答えてきた。それが小泉政権時代から、1日2回と制限された経緯がある。それすらも避けるというのは、無責任に過ぎる。首相は、「国民目線の政治」を旗印としてきた。最後まで、きちんと自らの仕事をやり遂げるべきだ。(福元竜哉)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080903-00000051-yom-pol