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2008年09月02日(火) 00時53分

首相退陣表明 幕引き会見は18分 疲労の表情、声震え毎日新聞

 「これからの政治を考えての決断」「国民に迷惑がかからないように時期を選んだ」。1日夜、突然退陣を表明した福田康夫首相は、その判断やタイミングが間違っていないと強調した。8月1日の内閣改造から1カ月。望みをかけた支持率上昇もままならず、展望が見いだせない中で自ら引いた幕。「これまで誰も着手しなかった国民目線での改革に着手した」と成果にも言及したが、昨年の安倍晋三前首相に続き、「無責任すぎる」「国民投げ捨てだ」との批判が各方面から噴出した。【日下部聡】

 午後9時半。福田首相が首相官邸の記者会見場に入ってくると、空気が張り詰めた。黒のスーツに灰色のネクタイ姿。この日は民主党の小沢一郎代表が党代表選に出馬表明したばかり。敵前で後ろを向いた首相は疲れ切って見えた。

 うつむき加減で、時折メモに視線を落として話す。声がカメラのシャッター音にかき消されてしまう。

 「先の国会では民主党が重要案件の対応に応じなかった」と野党を批判。続けて「私は本日、辞任することを決意しました」と述べた。語尾はほとんど消え入るようだった。

 しかし、質疑応答に移ってからは普段の福田節が復活した。唐突な辞め方が安倍前首相と同じで「政治不信が高まるのでは」との質問には「安倍前総理のケースとは全く違う」と主張。「これからの政治がどうあるべきかを考えての決断」と強調した。

 「首相の言葉は人ごとのようだという批判がある」と聞かれると「私はね、自分自身を客観的に見ることができるんです。あなたと違うの」と返し、18分間の会見を終えた。

 ◇野党批判「国民投げ捨てだ」

 熟慮の末の決断だったと言葉をつらねた福田首相。しかし、野党議員のほか、与党の側からも失望と驚きの声が上がった。

 共産党の志位和夫委員長は国会内で「臨時国会で論議を行い、争点をはっきりさせた上で国民の審判を仰ぐべきだ」と話した。社民党の福島瑞穂党首は「選挙のために辞めさせる自民党も、投げ出す福田首相も、国民のことを考えていない。国民投げ捨て内閣だ」と批判した。

 国民新党の亀井久興幹事長は党本部で会見し「あまりにも無責任だ。内閣改造し、12日からの臨時国会(召集)を決めておいて、こういう辞め方は最もまずい」と指摘した。

 衆院厚生労働委員会理事の山井和則議員(民主)は「遅きに失した。就任後の1年は空白の1年で、物価対策なども何も進んでいない。ここまで仕事をしなかった首相はいない。続投させた自民、公明両党の責任は大きい」と批判。「もし麻生太郎幹事長が自民党総裁になるとすれば、3代続けて国民の信を受けない総裁が総理になることになる。即刻、総選挙で信を問うべきだ」と語気を強めた。

 05年の衆院選で初当選した「小泉チルドレン」。

 「最初から最後まで人ごとだった」。東京・新宿の早稲田商店会会長だった安井潤一郎氏(比例東京)は憤りを隠さず「また政治的空白ができてしまう」と不安をのぞかせた。新潟県の旧山古志村長だった長島忠美氏(比例北陸信越)も「国民が日々の生活に苦しんでいる時だけに、信じられない思い」と戸惑う。ピンクのパンツスーツがトレードマークの井脇ノブ子氏(比例近畿)も「『またか』と跳び上がった。首相はまじめだが、発信力が少し足りず、分かりにくい政治になってしまった」とこぼした。

 一方、自民党の北村誠吾副防衛相は「首相としては『やることはやった』との思いがあったのだろう。本人は大人なのだから熟慮の上で決断したに違いない」とかばった。

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