記事登録
2008年09月02日(火) 16時00分

投資詐欺の実態「毎年莫大な被害金額を生むM資金詐欺とは」MONEYzine

■M資金詐欺とは

「M資金詐欺」という犯罪手口をご存じだろうか。
 いわゆるM資金詐欺とは、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)が旧日本軍から徴収し、現在も極秘に運用されていると噂される架空の秘密資金に基づく詐欺のことをいう。

 M資金詐欺は通常、社会的地位が高く資金管理能力に優れた特別な人だけに、M資金の一部を非常に有利な金利等で貸し出すなどという形で切り出される。そして、その申込には信用の裏付けのため手数料が必要となる。ところが、数千万円にものぼる手数料を支払いM資金からの貸し出しを待っているものの、すでに詐欺師は逃亡しているという詐欺である。

 ちなみに、M資金の「M」とはGHQ経済科学局の第2代局長であるウィリアム・フレデリック・マーカット(William Frederick Murcutt)少将の頭文字の「M」であるという説が有力である。

 タネをあかせばたいしたことのない詐欺だが、M資金詐欺はその名称や資金の拠出根拠などを変えて世界中で日々跋扈しており、毎年莫大な被害金額を生んでいる。冷静になって考えてみれば、ほとんどの詐欺は単純で、騙されるはずのないものばかりである。実際には被害者には「自分は詐欺にひっかかるほど馬鹿じゃない」「騙されたのはよほど脇が甘い奴なのだろう」と思っている人が多い。しかし、現実には社会経験豊富な凄腕社長や百戦錬磨の投資家などが、次々と詐欺の被害に遭っている。どうしてこのような事態が生じうるのか。

■被害者は「普通の人」ばかり

 詐欺被害者には、1つ共通した事実が存在する。それは、彼らが騙されたときの精神状態が「異常だった」ということだ。それでは、どのようなときに人は精神状態が異常になり、詐欺被害に陥るのだろうか。多くの詐欺事例を分析してみると、詐欺師が以下のような手法を用いてカモに異常な判断を行わせていることが分かる。

■せっぱ詰まった者をカモにする

 第1に、「せっぱ詰まった者をカモにする」という単純な方法があげられる。以前流行った方法ではあるが、手形を利用したこんな詐欺がある。

 チラシや看板などに「資金繰りにお困りの方へ、わずかな手数料で優良手形を無担保で貸し出します」などと記載し、対象者例として「入金予定があるものの今日明日の資金繰りに困っている事業者、銀行取引停止処分となってしまった事業者、債権者から毎日督促があり仕事が手に付かない事業者」などを列挙する。

 冷静に考えてみれば、倒産寸前の者に優良手形を無担保で貸し出す者がいるとは思えない。そのとおり、詐欺師はペーパーカンパニーなどを利用して、決済されることのない手形を乱発し、手形を貸し出す際に受領する手数料を詐取しているだけである。

 しかしながら、対象者とされている今日明日の資金繰りに困った事業者は、このような詐欺師の言葉が神の声のように心地よく聞こえてしまう。もっとも、この詐欺は、せっぱ詰まった状況に陥らないように注意すれば防ぐことができるだろう。しかし詐欺師は恣意的に被害者をせっぱ詰まった状態に陥れるのだ。

■意図的にカモをせっぱ詰まった状態にする

 それが第2の、「意図的にカモをせっぱ詰まった状態にする」という方法だ。
 例えば、最初は元本保証を行う形で投資をしてもらう。これは貸金という方法でも良い。当初のうちは、約束通り配当金や利息の支払いがなされている。ところが、詐欺師は突如として「予想外の事態が発生して事業が傾きかけている。これを回避するために後○百万円だけ出資してくれないだろうか」と頼み込む。投資家は、最初に出資した金銭の元本が戻ってこないことを恐れ、さらなる出資に応じることになる。

 これで事業が建て直るかというとそうはいかず、詐欺師はさらに建て直すためには出資が必要だと迫る。除々に出資額が大きくなり、それに連れて投資家は後戻りができない状態、いわゆるせっぱ詰まった状態となってしまう。後は、自らの出資金を少しでも取り戻そうと考え冷静さを失っている投資家から、限界まで出資金をむしり取るのである。

 また、いわゆるオレオレ詐欺で「交通事故を起こした」「痴漢で警察に捕まった」などと電話越しに伝え親族などを動揺させる手口も、意図的にせっぱ詰まった状態に陥れる詐欺手法である。

■最初に儲けさせて欲に取り憑かせる

 第3としてあげられるのが、「最初に儲けさせて欲に取り憑かせる」という方法だ。これは典型的な手口ではあるが、違法な手法を用いた先物取引などで、最初に少し儲けさせることで、欲に取り憑かせて頭をいかれさせるという手法がある。

 一度、思いがけない儲けを手にした者は、たとえその後失敗して金銭を失ったとしても、その快感を忘れることができず、無一文になるまで投資し続けることになることが多い。これは何も詐欺に限定したことではない。特定のギャンブルに固執している者は、以前そのギャンブルで大勝ちしたことがあるのが通常である。その快感を忘れることができず、ギャンブルに打ち込むのである。

 これは、人間の本能を突いており、いとも簡単に異常な判断を引き出すことができる怖い手法である。このように、人は異常な精神状態であれば騙されかねない。そして、場合によって詐欺師は、被害者の精神状態を意図的に異常にすることが考えられる。

■相談できる人を近くに置く

 自らの精神状態が異常なときは、自分で自分の精神状態が異常であると気付くことはない。自らの異常さに気付けるのは、正常だからである。

 東京都で民事、刑事事件全般を扱う横張弁護士は、「何かに大金をつぎ込むときには、何でも相談できる人物を身近に置くこと」と対策を促す。「友人でもよいし親族でも構わない。ただし、その人の助言を無視して大金をつぎ込むようでは意味がないため、できれば信頼でき尊敬できる人が良い」とのことだ。

「大金をつぎ込もうとしているときには必ずその人に相談する」ただ、これだけを実行するだけで、詐欺被害に遭う可能性は劇的に減少すると見られる。

【関連記事】
投資詐欺の実態 巨額エビ養殖詐欺事件で使われた巧妙な手口
振り込み詐欺の新手法 勝手にお金が振り込まれる? 
なぜ、騙された被害者は泣き寝入りするのか
女性結婚詐欺師に騙された人々
まさか! 裁判所内で起きた詐欺事件

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080902-00000000-sh_mon-bus_all