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2008年09月02日(火) 12時04分

消費行動が野菜の値段を押し下げたオーマイニュース

 キャベツなどの夏野菜の価格が、異常に安い。

 食卓を預かる主婦にとって野菜の値段はとても無関心ではいられないものだが、この野菜の値段は、一部の産直や契約栽培などを除いては、全国各地に展開する青果物卸売市場で取引される市場価格(市況)が基準となって決まる。

 この市場価格を左右しているのは、需要量と供給量のバランスである。野菜の出荷量が過剰で品物がダブつけば、価格は下がるし、逆に品薄な野菜に、競って流通業者が殺到すれば、価格は上昇する。これが、いわゆる市場原理というものである。

 しかし、今年の野菜の市況はどこかおかしい。

 例えば、夏野菜の代表、キャベツ。スーパーでは、群馬産キャベツが1個100円を切った値段で売られている。日本一のキャベツの産地は、言わずと知れた、群馬県・嬬恋村である。すでにブランドである「嬬恋キャベツ」は、長年にわたって培われた実績から、日本中のどこの市場に出荷されても高い評価を受けているが、今年はいまひとつ市場価格が思わしくない。

 東京中央卸売市場(太田市場)の野菜市況によると、8月第1週(7月27日〜8月1 日)のキャベツの入荷量は550トン。これは、前年比97パーセントで、直近5年では最も少ない入荷量だ。この時期のキャベツは、結球時期が梅雨と重なるため、降雨量によっては収穫量に大きな影響をおよぼすことになるのだが、逆に今年は5月後半から梅雨どころか干ばつ気味で、このため、キャベツの収穫量は平年を下回っている。

 通常であれば、入荷量が少ないと市場価格が上がるということになるのだのが、このセオリーに反して8月第1週の取引価格は昨年同時期と比べて35パーセントも安くなっている。

 だが、この傾向は、キャベツだけに特化した現象でなく、きゅうりや大根などほかの野菜にもおよんでいる。農水省の調査によると、東京中央卸売市場の7月の野菜の平均価格は、きゅうりが3割、大根、ほうれん草が2割、それぞれ値を下げている。

 例年この時期は夏休みと重なり、野外でのバーベキューなどによるキャベツの需要が高まることや、暑さに弱い「葉物」と呼ばれる、ほうれん草などの夏野菜の入荷量は少なくなることもあって、キャベツやほうれん草の価格は比較的高値で取引されることが多い。だが、今年の夏は入荷量が平年以下にもかかわらず、市場価格がさっぱり上がらない。通常では考えられない、この不思議な現象の原因はどこにあるのだろうか。

 それは、どうやら消費者の消費意欲が減退していることにあるらしい。

 内閣府が8月に発表した消費動向調査によると、一般消費者に今後の物価の見通しを尋ねたところ、92パーセントの人が「悪くなる」と答えている。また、耐久消費財の買い時判断については、64パーセントの人が悪くなると答えている。それもそのはず、原油や穀物価格の高騰に伴う物価の上昇がやむ気配も見せず、また8月の月例経済報告も、景気が後退局面に入ったことを伝えている。

 このような背景が、消費者の財布のひもを締めさせ、野菜に対する消費意欲までも減退させたのである。

 だが、待ってくれ。いかに景気の先行きに不安を感じ、家計を預かる主婦の消費行動が鈍ったとしても、節約の優先順位はまずもって車や家電などの大型耐久財であるべきで、次いでレジャーや衣料費などが続き、食費はあくまで最後の方ではないのか。よしんば食費がその対象になるにしても、健康な体を維持するために欠かせない野菜が節約の対象になるというのは、あまり好ましいことではない。

 昔から、腹が減っては戦ができぬという。人間の体を動かす栄養素がいっぱい詰まった野菜をしっかり食べて、この苦しい難局を乗り越えようではないか。

(記者:藤原 文隆)

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