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2008年09月02日(火) 06時12分

声震え目うつろ 退陣表明「安倍前首相と違う」河北新報

 「お世話になりました」と言い残し、福田康夫首相は官邸の記者会見場を去った。1日夜、突然切り出した退陣表明。昨年9月の安倍晋三氏に続き、2代続いて就任から事実上1年足らずで政権を投げ出した。物価上昇、株価低迷など国民生活に直結する課題は山積み。政権浮揚を狙った内閣改造からもわずか1カ月。国民からは「なぜ」「無責任」と憤りの声が上がり、政治不信が加速した。

 声が震え、視線も泳いでいた。記者を見回すように「本日辞任することを決意いたしました」。1日、緊急記者会見で突然退陣を明らかにした福田康夫首相。安倍晋三前首相に続く「政権投げ出し」の事情を説明する言葉に、詰めかけた記者はメモを走らせた。

 午後9時半。こわばった表情で切り出した。「バトンタッチして以来、政治資金の問題、年金の問題、C型肝炎、防衛省の不祥事など、次から次へと、積年の問題が顕在化し、処理に忙殺された」。時折、感極まったように言葉が詰まる。

 政権維持をかけた内閣改造からわずか1カ月。「安心実現内閣」「国民目線の改革」の約束は何も実現しないまま。記者から「安倍前首相も唐突に政権を投げ出した。政治不信が巻き起こる」と追及されると「全く安倍前首相とは違う。健康問題はない」と一瞬気色ばんだ。

 自民党本部では職員が「何か1年前のデジャビュ(既視感)のようだ」とがっくり肩を落とした。

 テロ特措法延長問題や拉致問題などを抱える外務省。拉致被害者の再調査開始で合意したばかりの日朝協議担当のアジア大洋州局幹部は「自らの手で解決すると言っておきながら…」と絶句。

 テロ特措法を管轄する北米局職員も「安倍前首相に続く辞任表明。『日本は信用できない国』という評価が定着した」とため息をついた。

 関係機関からの問い合わせに大わらわの職員たちからは「(自民党の)麻生太郎幹事長が次の首相になるのだろうが、自民党じゃだめだという観測が既に関係諸国には広がっている」と青ざめた顔で語った。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080902-00000009-khk-soci