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2008年09月02日(火) 14時04分

【福田退陣】経済政策どうなる産経新聞

 福田康夫首相が1日、突然辞任を表明したことで、政府の経済財政運営は混とんとしてきた。原油・原材料高を背景に国内景気が後退局面に入ったとみられるなかで、農漁業者や中小企業から政府に迅速な対応を求める声が強まっている。辞任に伴う政治空白が長引けば、日本経済をさらに停滞させることになりねない。

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 「将来を見据えながら誰も手を付けなかった国民目線の改革に着手した。方向性は打ち出したと思っている」。福田首相は1日の辞任会見で1年弱の改革の成果に胸を張った。確かに道路特定財源の一般財源化や消費者庁の設置、社会保険制度の見直しなどの改革に道筋を付けたが、実現はいずれもこれからだ。
 衆参ねじれの難しい政治情勢の中で、福田政権は厳しい経済財政運営を強いられた。道路特定財源が焦点となった今年1月の通常国会では野党による攻勢にさらされ、揮発油(ガソリン)税などの暫定税率で1カ月間の失効を許した。日銀総裁人事では、政府が示した人事案を繰り返し不同意とされた。
 道路財源の一般財源化を決断したものの、具体論を示すことができなかった。財政再建の大きな鍵を握る消費税増税にも踏み込めず、「2、3年先」に先送りするなど、重要な政策では総じて踏み込んだ結論を出せなかった。
 一方、自らの花道にした総合経済対策ではばらまき色が強い内容となり、「旧来型の対策とは一線を画す考え方」は示せなかった。対策には公明党が主張していた所得税などの定額減税を年度内に実施することも盛り込まれ、赤字国債の増発の可能性もある。景気減速で税収が伸び悩むなかで、平成23年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化する目標達成は厳しくなっており、小泉政権以来の財政再建路線は福田政権になって大きく揺らいでいる。

  【写真で見る】 うつむき、虚ろに…福田首相の記者会見

 米国の低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)問題をきっかけにした世界経済の低迷には先が見えない状況で、日本経済の建て直しも急務だ。しかし、12日招集予定だった臨時国会の日程も先延ばしされることが濃厚となっており、経済対策を受けた平成20年度補正予算の審議も遅れることは必至。原油・原材料高に苦しむ国民に大きなしわ寄せがくることは確実だ。
 経済対策など福田首相が残した“負の遺産”を次期政権がどう引き継ぐのかが今後の焦点となるが、経済政策では与党内は一枚岩とはいえない。次期首相として、有力視されている麻生太郎幹事長は基礎的財政収支の黒字化目標の先送りに前向きな姿勢を示すなど、与党内には財政再建よりも景気対策を優先する風潮は強まっている。
 一方で、経済成長による財政再建を目指す上げ潮派の巻き返しも予想される。衆院の解散・総選挙を控え、経済財政政策をめぐる与党内の勢力争いも激しくなりそうだ。

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