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2008年09月02日(火) 14時06分

【福田退陣】企画「政権崩壊」 公明離反で孤立感産経新聞

 「この難局で首相を続けることは難しいので辞めようと思う。華々しく総裁選をやって、君の人気で自民党を蘇らせてほしい」

  【写真で見る】 うつむき、虚ろに…福田首相の記者会見

 首相、福田康夫は1日午後6時前、幹事長・麻生太郎を首相官邸の執務室に呼ぶと唐突に辞意を打ち明けた。首相は続いて官房長官、町村信孝を執務室に呼び、辞意を伝えた。町村は狼狽(ろうばい)し、「考え直してください」と翻意を促したが、福田はさばさばした表情でこう告げた。
 「いろいろ悩んだが、これは私が決めたことだ」
 麻生は決意が固いとみると、こう言って深々と頭を下げた。
 麻生「首相のご決断は尊重します。いつ表明するのですか?」
 福田「今からだ」
 麻生「ちゃんと関係者にご相談の上で表明なさってください」
   × × ×
 唐突にみえる辞任だが、予兆はあった。
 8月20日夜、神奈川・箱根で開かれた自民党町村派の研修会が終わると、森喜朗、小泉純一郎、安倍晋三の首相経験者3人と元幹事長、中川秀直ら町村派幹部が山梨県の河口湖畔の別荘に結集した。
 「福田さんは自分で解散する考えはないな」
 小泉がこう切り出すと出席者の一人が「それはそうだ。任期満了までじっくりやればいい」と言ったが、小泉は首を横に振った。
 「そこまで持たないだろう…」
 一同が黙っていると森はこう言った。
 「総裁選になれば、麻生も小池(百合子元防衛相)もみんな出ればいいんだ」
 同じ夜、福田は改造前の閣僚を首相公邸に招き、慰労会を開いた。
 「とにかくいけるところまで頑張りたいので、よろしくお願いします」
 福田の短いあいさつに前閣僚らは顔を見合わせた。
 「任期満了まで頑張ると言いたかったのか。それとも行き詰まったらきっぱり辞めるつもりなのか…」
 公明党が臨時国会召集日にまで注文をつける中、首相の孤立感は深まっていた。
   × × ×
 福田は麻生に辞任を告げるまで誰にも相談した形跡はなく、1日夜の辞任会見に自民党関係者は激しく動揺した。
 中川秀直は「とにかく驚いている。首相が決断した以上、自民党らしく開かれた総裁選を行い、新しい布陣をつくることに全力を挙げたい」。元幹事長の加藤紘一は「驚いた。党には計り知れない打撃だ。これを取り返すのは容易ではない」。参院議員会長の尾辻秀久は「首相の判断は理解できない。誰がやっても厳しい状況に変わりないのに…」とこぼした。
 年内解散に向け、福田政権に圧力をかけていた公明党も動揺を隠さない。代表の太田昭宏は「正直言って驚いている。首相として熟慮した末の判断だろう。首相の発言を重く受け止めたい」と厳しい表情のまま。
 福田の辞任会見を受け自民党本部には麻生ら同党役員が続々と参集し、対応を協議した。
 焦点は党総裁選。「民主党の代表選より後に総裁選をやるべきだ」「辞任ショックを吹き飛ばすために総裁選は早ければ早いほどよい」−。議論は2日未明まで続き、最終的に同日の党役員会で決めることになった。
 早くも与党内の関心は総裁選に移っている。焦点は候補者だが、麻生が出馬の意向を固めているほか、小池や町村、元政調会長、石原伸晃、国土交通相、谷垣禎一、消費者行政担当相の野田聖子の名前も浮上しており、乱立する可能性も出てきた。
 福田が後見人の元首相、森に電話で辞意を伝えたのは1日午後7時半すぎ。森は沈痛な面持ちで電話を切ると、側にいた中川にこうつぶやいた。
 「とにかく様子をみよう。安倍、福田と2代続けて迷惑をかけたのだからしばらくは謹慎だな…」
       (敬称略)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080902-00000928-san-pol