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2008年09月01日(月) 15時03分

売られやすい日本株、世界景気減退はクロス円の売りに波及ロイター

 [東京 1日 ロイター] 1日の東京市場は前週末と一転、株安に転じた。景気減速や地政学的なリスクの高まりを受けて、世界的に株式市場への資金流入が細っており、特に日本市場はこれまで下落率が小さかった分だけ、利益確定の売りにさらされやすい、との見方が出ている。
 為替市場でも、各国中銀の政策会合を前にクロス円を売る動きが目立った。一方、本来なら買われるはずの円債は一時急落した。市場では、これまで買い上げられてきた反動、との見方が多い。
 <株式パッシング、世界的な動き>
 株式市場では日経平均が反落している。前週末の米国株安と1ドル108円台の円高を嫌気して輸出関連株を中心に売りが先行した。海外勢からは400億円規模のバスケット売り注文が出たとみられている。
 「朝方の売り一巡後は方向感のない動きだ。今晩の米国株市場が休場となることや、国際情勢の悪化などで投資家の多くはキャッシュ化したポジションを動かせないでいる。前週末のドレッシングがはがれている面もある」(準大手証券エクイティ部)との声が出ている。
 グルジアをめぐるロシアの強硬姿勢が米ロの対立に発展するとの懸念や、パキスタンの政情悪化、さらに北朝鮮による核無能力化の中断など国際情勢がきな臭さを増していることで、すでに収縮しているグローバル投資資金が一段と萎縮している。株式市場の売買高減少は日本だけでなく、世界的な潮流でもある。
 新光証券エクイティ情報部マーケットアナリストの高橋幸男氏は「日本株はこれまで他市場にくらべて下落率が小さかった分、利益確定売りの対象となりやすい。また世界的にキャッシュ比率が高まっており、株式投資意欲が一時的にせよ減退している」という。高橋氏は「今週は週末に米国雇用統計のほか、国内では4─6月期の法人企業統計も控えており、方向感が出づらい」とみている。
 一方、いちよし証券・投資情報部チーフストラテジストの高橋正信氏は「レーバーデーが明けて海外勢が戻ってくるまでは相場の方向感は出ない。レバレッジ低下のプロセスではあるが、積極的な売り材料があるわけでもない。明日以降の海外勢のマネーフローを見極めたい」という。
 <中銀理事会前にクロス円売りが加速>
 景気悪化とその先の金融緩和を織り込む動きは為替市場でもみられた。今週は、2日に豪中銀理事会、3日にカナダ中銀理事会、4日に英中銀金融政策委員会、欧州中央銀行(ECB)理事会がそれぞれ予定されている。実際に利下げが予想されているのは豪だけだが、景気悪化を先取りして通貨を売る動きが続いている。
 特に英ポンドの下げが目立った。ダーリング英財務相が30日付のガーディアン紙とのインタビューで、英経済の低迷は当初考えられていたよりも深刻と述べたことや、英不動産調査会社ホームトラックが発表した8月英住宅価格(イングランドおよびウェールズ地方、季節調整前)が2001年の調査開始以来最大の下落を記録したことなどが手掛かりとなった。
 英ポンド/米ドルはロイターデータで一時1.8005ドルまで下落、2006年4月以来2年4カ月ぶり安値を更新した。英ポンド/円も3月以来の195円台をつけた。
 つれて、クロス円は軒並み安。ユーロ/円は朝方の159円半ばから損失確定の売りを巻き込みつつ、4月以来4カ月半ぶり安値となる158.42円まで下落。利下げ観測の強まっている豪ドル/円も同93円前半から92円前半へ下落し、5カ月ぶり安値をつけた。クロス円では「国内大手投資家や個人投資家の売りが出た」(都銀)とする声も複数出ている。
 <高値警戒の中、海外勢が円債売り>
 一方、固有の動きを示しているのが円債市場だ。国債先物は、前週末まで買い上げられていただけに、商品投資顧問業者(CTA)をはじめとする海外ファンド筋からの売りが出て、8月25日以来1週間ぶりの安値を付けた。長期金利の代表的な指標となる10年最長期国債利回りも一時7ベーシスポイント高い1.475%に上昇。8月20日以来8営業日ぶりの水準に切り上がった。
 複数の参加者によると、この日の下げは海外ファンドの先物売りが主因。「買い持ちを手仕舞いして利益を確定した公算が大きい」(別の外資系証券)という。
 中間決算期末をにらんだ邦銀勢による「益出し」や、補正予算の財源をめぐる思惑が下落の一因、との指摘も市場で聞かれた。「福田首相が赤字国債の発行は行わないと明言しているが、国債需給の悪化が避けられるかどうかは微妙」(邦銀の運用担当者)との声もあった。
 福田首相が「赤字国債の発行は行わない」と明言したことに絡んで、市場には「建設国債と赤字国債を分けること自体が時代錯誤」(外資系証券のチーフストラテジスト)と冷ややかな見方もあった。
 相場が下げると、日銀の政策スタンスも気になるところ。日銀の須田審議委員は28日、持続的な成長にある程度、確信が持てればそれなりに行動をとる必要があるとの認識を示しており、「須田委員は利下げ観測が広がらないようにけん制しており、一段の金利低下は限定的」(欧州系証券)との見方が聞かれた。
 外資系証券の債券ディーラーは「もともと海外ファンドの先物買いと月末のインデックス需要で支えられていた相場。長期金利は1.4%前後で反転上昇する可能性が高まった」と述べた。
 (ロイター日本語ニュース 橋本 浩記者 編集:佐々木 美和)

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