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2008年09月01日(月) 11時04分

Apple の栄光にも陰り?japan.internet.com

 ここ数週間の間、一新された新型「iPhone 3G」のヒビ、3G 方式での受信問題(3G が使えないのでは iPhone 3G を購入する意味がない)、Apple の最新オンラインベンチャーである MobileMe の大規模な障害発生といった欠陥の報告が各所から出ていた。

これは、顧客を次なる目玉へと導くべく Apple があまりに手を広げすぎつつあることを示す兆候なのだろうか? 幅広く知れ渡ったこれらの失策は、Apple のこれまでの輝かしい栄光に影を落とすのだろうか?

新しく革新的な製品やサービスを投入し続けるプレッシャーが、ほかのどのハイテク企業よりも大きく Apple にかかっていることについてはほぼ疑問の余地はない。ここ数か月見られたように、Apple の株価と新製品の発売との間には密接なつながりがある(四半期決算の記録を更新しても投資家の同社に対する熱意が冷めるほどなのだ)。Apple は革新的な会社だと見られており、投資家は技術革新の成果が店頭に並び、それっが顧客に定期的に散財をさせることを期待しているのだ。

では、なぜ Apple はつまずいているのだろうか? 同社があまりにも手を広げすぎたという点についてはほぼ間違いないと思う。Apple の最高経営責任者(CEO)、Steve Jobs 氏は、MobileMe の立ち上げは「栄光の時とは言い難い」とし、社内向けの電子メールに反省の言葉を書いている。具体的には次のように内容だ。

・MobileMe はもっとテストすべきだった。
・MobileMe を一体型サービスとして立ち上げる必要はなかった。
・MobileMe を iPhone 3G、「iPhone 2.0」ソフトウェア、そして「App Store」と同時に立ち上げるべきではなかった。

これは、Apple があまりに短い間にあまりに多くのことをしようとして通常より多くの失敗を犯していることを同社トップが告白したものだ。その発端となっているのが新しい製品やサービスを発表したいという社内の願望なのか、それともまた新たなヒット製品を出すようけしかける社外の投資家なのかは分からないが、それが何であれ、これは「急がば回れ」という古い格言の完ぺきな実例だ。

Apple に悪影響を与えているもう1つの側面が極度の秘密主義だ。同社はどの製品も生死にかかわる秘密のように扱うことから、絶対不可欠なベータテストなどを行う余地が全くない。

筆者は、ベータテストを実施すれば問題点がすべて排除されるなどと言うつもりは決してない(Vista が好例だ。これほど大規模なベータテストを実施しながら、いくつもの深刻なバグを残してリリースされた OS はかつて見たことがない)。だが、テストを実施すれば恥ずかしいミスをいくつか事前に見つけ出すことができるのだ。機密性があるために、Apple には本格的な発売前テストを実施する余地がない。それを実施していれば、準備が完了する前に MobileMe をリリースしてひどい打撃を受けることもなかったかもしれない。

殊ハードウェアに関しては、Apple は自らの成功の被害者である。ハードウェアのベータテストを幅広く実施するのは不可能(実施にはかなりのコストがかかり、機密もすべて明かされてしまう)であるため、大半の企業は新製品の初期導入者にベータテストを委ね、製品を先に入手する代わりに多少の問題を我慢してもらうことになる。Apple は他社とは違う手法を採用しており、製品を発売するたびに大々的な宣伝を展開しているため、それになることの落とし穴に気付かない普通のユーザーが大量に初期導入者になってしまう。

もう1つ Apple に影響を与えているのが顧客層の変化だ。Apple は従来、製品を購入し、バグがあってもそれが修正されるまで我慢するという、少ないながらも忠誠心の強い顧客に恵まれていた。

だが、最近は Apple の顧客ベースが大幅に拡大し、機械的に同社に対する強い愛着を示すことに関心のない人がほとんどになった。彼らにとって Apple 製品を購入することは商取引であり、彼らは金額に見合った満足のゆく製品を期待している。

しかし、Apple にはもう1つの側面がある。同社について忘れてならないのが、顧客を満足させておくのが得意だという点だ。実際、Apple は何か問題が発生したときの素早い無償交換の実施に関しては市場有数の企業だ。

筆者は、Apple 製品で問題に遭遇した顧客を多数知っているが、そのほぼすべてのケースで問題は対応が行われ、解決されて、購入した製品にも、それを購入した会社にも良い印象が残っている。筆者には、この点に関して Apple に匹敵する企業は1社も思い浮かばない。もし Apple の栄光に輝きを与え続けているものが1つあるとすれば、それは同社の優れた顧客サービスなのだ。

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