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2008年08月31日(日) 18時10分

『デスノート』の間取りは絶対に描けない産経新聞

 ■名作漫画・アニメの「間取り」はこれだ(下)

 漫画やアニメなどに登場する50軒の間取りを作図した『名作マンガの間取り』(ソフトバンククリエイティブ刊)。著者で岩手県盛岡市の不動産業・建築コンサルタント、影山明仁さん(44)が「どう料理しても間取りにならなかった」物件が、いくつかある。

【写真】「ドラえもん」野比家の間取りはこの通り

 その一つは、あだち充「タッチ」のヒロイン、浅倉南の実家で喫茶店の「南風」。断念した理由は「玄関が出てこない」ことだった。

 影山さんは漫画の描写から間取りを推測する際、玄関から描き始めるのだという。「逆に言うと、玄関が分からないと間取りが決まらない。南ちゃんはいつも喫茶店の出入り口から帰ってくるので、漫画を見ながら『どうして店から帰るのよ』と嘆いていた」。

 高橋留美子「めぞん一刻」の一刻館では、「管理人さん」こと音無響子が暮らす管理人室の扱いに頭を悩ませた。

 「漫画によれば響子さんの部屋は8畳から10畳あるはずなのに、一刻館の建物が長方形に描かれているため管理人室は4畳半分しかスペースを取れない」

 さらに、五代くんの部屋に四谷さんが顔を出す押し入れも、部屋の隅ではなく真ん中に描かれているため、両脇にデッドスペースができてしまう。結局、「現実には建たないけれど、想像を交えるという寝技を使って完成させた」という。

 これまでに数々の間取りを作図してきた影山さんだが、作図しやすい間取りは、ずばり「家族仲のよい家」だという。

 「特に、母親の存在が大きいと、生活シーンが多く出てくるし、移動のシーンも多いので描きやすいのです」

 だから、と影山さんはつけ加えた。

 「『デスノート』の間取りは絶対に描けません。主人公の少年の部屋は細かく描写されているものの、他の家族や部屋がほとんど出てこないためです。描いてほしいとリクエストを受けましたが結局、あきらめました」

 漫画やアニメの間取りを通して、現代ニッポンの家族の風景までもが見えてくる。
 テレビアニメ「母をたずねて三千里」をめぐっては、別の用事でパリを訪れた際にイタリアまで足を伸ばし、「マルコの家」を探しに行った。

 「第1回目の放送で、マルコが学校から帰ってきて、馬小屋のじいちゃんに挨拶して階段を上がっていくシーンがある。一瞬ですが、水を汲んだバケツを運んでいる。この場面を見て、マルコの家には給水設備がないことが分かります」

 同アニメの場面設定と画面構成は、若き日の宮崎駿監督が担当していた。その2年前の昭和49年に放映されたアニメ『アルプスの少女ハイジ』も宮崎さんが場面設定などを手がけ、テレビアニメで初めてロケハンを敢行して細部を練り上げたとされる。

 「宮崎さんの設定は実にしっかりしていますね。『ハイジ』のおんじの山小屋も、あれは実際に建っているものですよ。間取りを描いてみればすぐに分かります」

 どこまでも「間取り」にこだわる影山さんだった。

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