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2008年08月31日(日) 09時30分

京滋の7市町村「黄信号」 財政破たん、基準厳格化で京都新聞

 破たん基準を厳格化した自治体財政健全化法の本年度施行に伴い、今後5年間に改善への努力が必要となる「黄信号」の健全化団体に転落することが懸念される自治体が京滋で7市町村あることが、京都新聞社のアンケートで分かった。財政状況を改善するため、公共料金の値上げを実施・検討している団体は半数以上に上り、新基準が住民負担に跳ね返るとみられる。
 ■回避へ公共料金値上げ、半数超が実施・検討
 健全化法は北海道夕張市の破たんを受けて昨年6月に成立した。これまでの財政再建制度と異なり「隠れ借金」となってきた病院などの公営企業、第三セクターの負債も含めた連結決算で判定する。
 状況が悪ければ「黄信号」とされる早期健全化団体(自治体)と経営健全化団体(公営企業)、「赤信号」に当たる破たん状態の再生団体に区分される。2008年度決算から適用され、「赤」なら起債制限、「黄」でも公共料金の大幅値上げや施設統廃合など厳しい改善策を求められる。国は07年度決算での試算を指示、9月に結果が公表される。
 アンケートは京都、滋賀の全54府県市町村に実施した。ここ5年以内に「黄」の恐れがあると回答したのは京都市、宮津市、城陽市、大山崎町、南山城村、大津市、近江八幡市の7団体。特に京都市は市バス、地下鉄事業が来年度から経営健全化団体になる可能性が濃厚という。
 また、同法案が示された07年度から5年間で、公共料金の値上げを実施・検討している自治体は30団体。公営企業の上下水道料金に集中している。
 公共料金の値上げは全国的にも続出している。総務省は「自治体は従来、普通会計の黒字にだけ目配りし、公営企業の赤字には関心が薄かった。破たんを防ぐため料金設定を含めた適正化が必要だ」としている。
 ■隠れ借金、住民に「つけ」
 病院や地下鉄など自治体の「隠れ借金」にメスを入れる新たな財政破たん基準の導入が、公共料金値上げの動きを加速させている。自治体は「国から厳しい策を求められる前に自ら改善する」というが、赤字を放置してきたつけともいえ、負担を転嫁される住民の反発も予想される。
 京滋自治体の2006年度決算で、従来の審査対象だった普通会計(一般会計と一部特別会計)の赤字は大山崎町(約7000万円)だけ。しかし、新基準で対象になる公営企業では8市町で累積赤字があり、総額は約470億円に上る。京都新聞社のアンケートでは、30団体が5年以内に公共料金の値上げを実施・検討すると回答、その7割以上が公営企業の料金改定で経営を改善する方針だ。
 深刻なのは京都市営地下鉄。07年度決算で約290億円の不良債務があり、「黄信号」の基準を6倍以上超過、来年度の「黄」指定は不可避とみられる。指定後は市が計画を立てて自主再建を図るが、国の指導も入る。市は「5年ごとに5%値上げする計画だが、それでも赤字解消は45年後。それ以上の値上げを国から求められても住民理解が得られるのか」と悩む。
 公営企業は、料金収入と国が基準を示す税収からの繰り入れで運営するのが原則。ただ基準より投入額を増やし料金を抑制する自治体が多いのが実情だ。
 宮津市の下水道会計は07年度決算で、国基準の約3倍の約6億円の投入を行ったが、累積赤字は5億2200万円。国基準で運営すれば料金は現行の2・6倍の1カ月8000円に上げなければならず、頭を抱える。病院事業に8億円以上を繰り入れた近江八幡市も「これ以上の税投入を続ければ、病院だけでなく市本体が破たんする。値上げは避けられない」と話す。
 総務省は「黄」の健全化団体は全国で150−200団体程度になると推定しており「自主再建が基本だが、国が関与するケースもあり得る」としている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080831-00000001-kyt-l26