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2008年08月30日(土) 08時01分

消費者物価2・4%上昇 悪循環…景気さらに重し 日銀“板ばさみ”動けず産経新聞

 7月の消費者物価指数(CPI)が実質16年ぶりの高い伸びとなったことで、日本経済は景気後退と物価上昇が同時進行する「スタグフレーション」の様相が一段と強まった。原材料価格の上昇が商品価格に波及しており、今後も食料品を中心に値上げが続く見通しで、後退局面に入ったとされる国内景気にとって大きな重しとなる。「物価の番人」である日銀も物価上昇と景気後退の板ばさみで動くことができず、金融政策は手詰まり状態にある。(本田誠)

 消費者物価の上昇率が、日銀が安定的な物価上昇の上限としている2%を超えたのは原油など原材料価格の高騰によるコスト上昇分を商品価格に転嫁する動きが広がっているためだ。原油価格はピークから2割程度下落したものの、依然高値水準にあり、原材料価格の影響をコスト削減で吸収できなくなった企業が相次いで値上げに踏み切っている。値上げの対象商品も、これまでの食料品や日用品などから、自動車や電気製品に広がってきた。

 しかも、現在の値上げは需要増大を伴っていない「悪い物価上昇」だ。こうした現状について、第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミストは、「日本経済はスタグフレーション的色彩が濃くなっている」とみる。

 一方、これまで日本の物価下落を演出してきた中国からの輸入品が、逆に先行きの値上げ要因になる懸念もある。中国内の人件費の上昇が原因で、日銀がまとめた7月の輸入物価指数によると、衣類など中国産の割合が高い輸入品の物価指数が軒並み上昇している。

 農林中金総合研究所の南武志主任研究員は原油価格が現状の水準で推移することを前提に「消費者物価は今秋にも一時的に2%台後半まで上昇率が高まる可能性がある。その後は徐々に上昇率は縮小し、年明けには2%前後まで低下する」と指摘する。

 輸出や個人消費の失速で4〜6月期の実質国内総生産(GDP)は4四半期ぶりにマイナス成長となり、政府も日銀も事実上、景気後退局面に入ったことを認めた。賃金が伸び悩んでいるなかで物価上昇が進んでいるため、消費者が節約志向を強めることは確実だ。政府は29日に総合経済対策をまとめたが、日銀は物価を抑制する利上げにも、景気を刺激する利下げにも動けないことに変わりはない。物価上昇が消費の低迷を招き、さらに景気の重しとなる。そんな悪循環がなおも続きそうだ。

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