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2008年08月28日(木) 11時19分

チベット流民主主義の一端を見たオーマイニュース

 8月13日から22日まで、ちょうど10日間、インドのダラムサラでチベット亡命政府関係だけでも、議長、3人の大臣、4つの機関の関係者に話を聞いた。この取材を通して強く印象に残ったのは、ダライ・ラマ14世という指導者の存在感と、民主主義に対するチベット独自のセンスだった。

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■法王は政治指導者としても偉大だった

 亡命チベット代表者議会のカルマ・チョペル議長によれば、チベット社会の民主化は、ダライ・ラマ14世の考えに基づいたものだという。

 「16歳で政治と宗教のトップになった14世は、『チベットの悪しき習慣を変える必要がある、民主主義を取り入れる必要がある』と提唱していました。しかし中国の侵攻によって、それを実現できないまま亡命し、亡命政府において民主制を取り入れました」(チョペル議長)

 1〜3 年生まではチベット語しか教えないという新しい小学校を取材したが、これも、亡命した時点でダライ・ラマが提唱していたものだという。

 チベットの伝統芸能の保存・発展を目指すチベット舞台芸術団(TIPA)代表によれば、TIPAは亡命政府設立時に最初に設立された団体だ。

 法王に向けられるチベット人の尊敬は、宗教的畏怖(いふ)という側面が強いのだろう。しかし民主化、教育、文化保存などにおいても、ダライ・ラマには具体的で明確な功績がある。記者自身も、ダライ・ラマ14世という指導者の偉大さを意識せずにはおれない取材だった。

■プロパガンダよりフェアネス

 亡命政府は中国に対して「独立」は主張せず、自治区としての自主性を主張している。非政府組織の中には独立を主張する団体もあるが、いずれも武力闘争や恫喝(どうかつ)外交的な路線はとっていない。

 となれば「情報」が大きな武器になる。そこで記者は亡命政府・情報国際関係省のケサン・ヤンキー・タクラ大臣に「世界のメディアに期待することは?」と尋ねたところ、こんな答えが返ってきた。

 「そういうことは何も考えていません。ウエルカムです」

 チベット独立を主張する元政治囚組織「グジュスム」のンガワン・ウォバル代表は、「チベット人の言うことを鵜呑(うの)みにしなくていい」とまで言う。

 「中国側の言い分もしっかり聞いて、自分で判断してほしい。その上で中国の味方をするというなら、それでも構わない」

 プロパガンダ的な姿勢ではなく、あくまでもフェアで自発的な判断を呼びかけた上で、彼らは国際社会のサポートを期待している。

■チベット社会は理想郷ではない

 彼らの民主的センスやフェアネス精神には、われわれも学ぶべき面が多いと感じる。しかし当然のことながら、亡命チベット社会は理想郷ではない。例えばカルマ・チョペル議長はインタビューでチベット社会の民主制に課題があると語っているし、チベット人民衆の間にも問題はある。

 「古参亡命者の中には、比較的最近に亡命してきたニューカマーを見下す傾向もある。特にチベットの地方の農村などから亡命してきた人は、『田舎くさい』と思われがち。こちらに親戚(しんせき)や知人がいない亡命者は、ダラムサラで何カ月か過ごしても友達ができないこともある」(現地日本人)

 「チベット人は、汚い仕事をしたがらない。ダラムサラでも、飲食店の皿洗いなどはインド人にやらせている。そういうところが、自分でもバカだと思う」(現地チベット人)

 ダラムサラには多くの物ごいがいるが、すべてインド人だ。インド人の間では、チベット人に対してよくない感情を抱いている人もいるという。

 チベット人をことさらに美化して応援するのは間違いだろう。

 しかし、だからといって彼らが人権や自由を奪われるいわれはない。そんな見方で、記者は今後も彼らに関心を持っていたいと思う。

■「全財産」は永遠に不滅です

 残念ながら「オーマイニュース」にはもう時間が残されていない。この原稿が掲載されるころ、記者は全財産をはたいてチベット自治区ラサにいる予定だ。しかし記者が「オーマイニュース」に記事を書くのは、この原稿で最後かもしれない。それでも、今後も全財産をはたき続けようと思う。

 ご愛読、応援、批判等々、いままで本当にありがとうございました。最後に、リニューアル直前の忙しい中で編集や取材サポートにあたってくださったオーマイニュース社員・関係者の皆さんに、この場を借りてお礼を申し上げます。

(記者:藤倉 善郎)

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