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2008年08月28日(木) 00時03分

<アフガン拉致>「大地に緑を」志半ば 伊藤さん遺体確認毎日新聞

 アフガニスタンで拉致された非政府組織「ペシャワール会」の伊藤和也さん(31)は、捜索が再開された27日午前、遺体となって現地の渓谷で見つかった。5年にわたり、乾いたアフガンの大地に水と緑を与えてきた若者の善意に対するあまりにも非情な仕打ち。無事救出を祈ってきた仲間は深い悲しみに包まれたが、意義深い事業から今後も撤退する意思のないことも強調した。【朴鐘珠】

 27日午後2時過ぎ。「伊藤君をよく知る現地の村人が身元を確認しました」。ペシャワール会の本部が入る福岡市中央区のマンションで、そう切り出した事務局長の福元満治さん(60)は両手を握りしめ、怒りで顔がこわばっていた。

 会見は約1時間に及び、現地のスタッフから、現地代表の中村哲医師(61)を通じてもたらされた情報が明らかにされた。福元さんは「最悪のことが、起こってほしくないことが、やっぱり起こった」と語り、中村医師が静岡県掛川市の伊藤さんの実家に「遺体発見」を知らせたことも告げた。

 事件が報じられた26日午後から繰り返された記者会見。それまで冷静さを失うことのなかった福元さんの声が一段と大きくなったのは、政情不安が高まるアフガンで、活動を続ける是非を問われた時だった。「ここで挫折しては絶対にだめだ。非難の声は甘んじて受けますが、これでやめると日本人はだめになる」。ほおには悔し涙がこぼれていた。

 伊藤さんの訃報(ふほう)を伝えてきた中村医師は電話口で「良くない方の推測になった」とつぶやいたという。誤報であってほしい願う半面、遺体を確認したのが現地の村人だったと聞き、希望は絶たれた。5年間、共に畑で汗を流した伊藤さんの顔を、村人が間違えるはずはない。その後、ペシャワール会のスタッフも身元確認をしたという情報も入り、望みは打ち砕かれた。

 現地スタッフは、拉致された伊藤さんを捜索するため、1000人もの村人が総出で山を登ったことを伝えてきた。その話を紹介した福元さんは「伊藤君、つらかったなと。でも君はやったなと、そう言ってやりたい」と語り、一瞬救われた表情を見せた。

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