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2008年08月27日(水) 22時03分

激化する誘拐事件 背景にタリバンの復活 アフガン拉致産経新聞

 【バンコク=菅沢崇】国際社会の支援に依存せざるを得ない状況に置かれているアフガニスタンでは、ボランティアや記者の誘拐事件が昨年から激しさを増している。2006年ごろからイスラム原理主義勢力タリバンの活動が再燃したのと並行し、これまで比較的安全とされていた地域でもテロが深刻さを増している。アフガン政府は治安の危機に直面し続けている。

 外国人に対する誘拐事件としては昨年3月、タリバンが南部へルマンド州で、取材中のイタリア人記者を付き添いの現地ガイドとともに誘拐。4月にはニームルーズ州でフランス人の支援活動家ら5人が連れ去られ、解放されるまで2カ月以上を要した。タリバンは、拘束されている幹部の釈放を人質解放の交換条件とし、身代金も要求するなど悪質化している。

 アフガンの外交筋は「首都カブール以外の地方都市では、自動小銃を持って徘徊(はいかい)するタリバンの姿は珍しくない。支援活動家に注意喚起を促すだけでは、誘拐などを防ぐことは難しい」としている。

 さらに深刻な問題となっているのは、誘拐などの発生地域の拡大だ。昨年7月には、それまでは比較的安定していた中部ガズニ州で韓国人のボランティア23人が誘拐された。その数日前にもドイツ人などが誘拐されている。タリバンの勢力が強かった南部地域だけでなく、他州にも犯行が飛び火し始めている。北部地域では大規模なテロが発生するようになり、中央政府にはもはやタリバンを掌握する力がないことを印象づけている。 

 アフガンのカルザイ大統は、パキスタンからの越境テロが行われていると非難している。これに対し、パキスタン側は「国境地帯の地雷設置を拒否するなど、対策を怠っているのはアフガン側だ」と応酬し、「テロとの戦い」の足並みはまったく揃っていない。

 国連によると、03年のアフガンのケシ栽培生産量は過去最高を記録した。タリバンは農民や密輸業者から10%の“税”を徴収し、昨年1年間で4億ドルがタリバンに流れ込んだ。資金は潤滑になっているとみられ、治安の安定化は遠のくばかりだ。

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