記事登録
2008年08月26日(火) 16時53分

【共犯尋問(5)】「土地・建物転売で50〜60億になる」 緒方、満井両被告の皮算用産経新聞

 《検察官は、河江浩司被告が、ある弁護士グループに投資を依頼した状況を聞き始める。複数の投資家に接触したものの、投資の約束を引き出せなかったことを裏付けたいようだ》

 検察官「東京都内の弁護士(質問では実名)に投資をお願いしましたね? この弁護士と会ったのはいつですか」
 河江証人「平成19年4月23日の夜にこの弁護士の事務所で会いました」

 検察官「どのようにしてこの弁護士と知り合いましたか?」
 河江証人「投資家探しを依頼した大学時代の友人を通して知り合いました」

 《検察官は突然、質問の内容を変えた。緒方重威、満井忠男両被告が、総連の土地を転売することでどのような“皮算用”をしていたのか確かめるためだ》

 検察官「総連との売買契約の中に、総連が賃料を払えない際は、総連が強制退去しなければならないとある。総連が強制退去した後、土地・建物はいくらくらいで転売できると満井被告は言っていましたか」
 河江証人「19年5月11日に韓国に向かうために乗っていた成田行きのリムジンバスの中で(満井被告に)言われました」

 検察官「バスでどう言われましたか」
 河江証人「総連が強制退去で出ていったら、50〜60億で売れると」

 《検察官は再び、河江被告が都内の弁護士に投資を説明した状況を聞き始める》

 検察官「19年4月23日の話に戻ります。都内の弁護士の事務所を訪れた際、証人は総連との契約について説明しましたか」
 河江証人「条件に基づいて、総連から土地・建物を30億円で購入。総連から5年後に35億で買い戻してもらう。それまで毎年3億円の賃料を払ってもらうと説明しました」

 検察官「説明した後、投資を依頼しましたね」
 河江証人「はい」

 検察官「総連が賃料を払えない場合、強制退去するということも説明していますね。弁護士からは問題を指摘されましたか」
 河江証人「これまでの朝鮮総連のしてきたことから考えて、すぐに強制退去させることはできないのではと」

 検察官「そのような指摘にどう答えましたか」
 河江証人「総連側には、元日弁連会長の土屋公献弁護士が、購入側には元公安調査庁長官の緒方弁護士がついているので安心ではと」

 検察官「そこで投資を依頼した弁護士はなんと答えましたか」
 河江証人「自分が納得しない限り、投資家には説明できないので考えさせてくれと言いました」

 《メモを取り続ける緒方被告と、時折、河江被告の証言に不満そうな表情を浮かべる満井被告が対照的だ》

 検察官「都内の弁護士事務所を出た後、満井被告に契約内容が変わったことを言われましたね」
 河江証人「その日の夜に電話が来て、購入価格が30億から35億に上がって、ほかも変更になると。買い戻し価格が42億になり、賃料は違約金と名称が変わって3億5000万円になったと言われました」

 検察官「売買価格引き上げの理由を満井被告は話していましたか?」
 河江証人「総連とRCCとの裁判で、土地・建物の評価額が34億4000万円となっているから、それ以上の値段で購入しないといけないといわれた」

 検察官「その他に理由を言いませんでしたか」
 河江証人「いいえ」

 検察官「証人の調書には、『満井被告が総連から引き出す前さばき金を引き上げるため、購入価格を変更したと言っていた』との記述があるが、証人がこのような内容を検察官に説明したのではありませんか」
 河江証人「いいえ違います。検察官に『協力してもらう』といわれ(自分の供述と違う調書に)サインしました」

 検察官「19年4月23日夜の電話の後、満井被告とは改めて会いましたか」
 河江証人「翌日に六本木ヒルズのグランドハイアット東京のレストランで会いました」

 検察官「なぜ購入価格を変更したのか、満井被告が“真相”を話したのでは」
 河江証人「いいえ」

 検察官「実際の理由を話したと、検察官に供述していませんか」
 河江証人「先ほどと同じで、検察官に『現金詐欺では立件していないのだから、協力してもらう』といわれたので」

 《検察官が法廷で明らかにした河江被告の調書では、満井被告が購入価格変更の理由を『RCCの評価額というもっともらしい理由を付けて、購入価格を引き上げて、総連側が両被告に支払う“前さばき金”も3億円から3億5000万円に引き上げさせるため』と河江被告に説明したことになっている》

 検察官「(河江被告の調書の内容を説明して)このように満井被告に購入価格の変更を説明されたのではありませんか」
 河江証人「いいえ、違います。先ほどと一緒で、取り調べの検察官に『協力してもらうぞ』といわれたので」

 検察官「証人は公判で『検察官に協力してもらうぞ』といわれたと繰り返している。検察官にそう言われたのはいつですか」
 河江証人「(緒方、満井両被告が再逮捕された19年7月18日を指して)その日からだと思います」

 検察官「しかし、7月18日以前に売買価格引き上げの“真相”を話しているのでは」

 《ここで弁護士から“真相”という言葉遣いに「予断を与える」と異議が入る》
 《検察官は、購入価格引き上げの“真相”を緒方、満井両被告が、総連側からより多くの資金を引き出すためだったとしている》

 検察官「7月18日以前に話しているのではありませんか」
 河江証人「いいえ」

 《調書の内容を認めない河江被告に、検察官は少し苛立っている様子だ》

 検察官「話はもとに戻りますが、グランドハイアット東京で、満井被告からSPC(特定目的会社)の代表者に誰がなるか聞きましたか」
 河江証人「緒方先生がなってくれると告げられました」

 《検察側冒頭陳述によると、満井被告は朝鮮総連の趙忠治常任委員らに対し、土地建物の購入資金の受け皿会社としてSPCを設立すると虚偽の説明をしていた》

 検察官「その際、(河江)証人の報酬の支払いがどうなるかは確認しましたか」
 河江証人「はい。『私の報酬も考えてくれているのか』と聞きました」

 検察官「(報酬の)1億円という数字を出して確認したのですか」
 河江証人「『1億くらいで大丈夫ですよね』と聞きました」

 検察官「緒方被告の報酬についても話が出たのですか」
 河江証人「投資家に対しては『緒方先生の報酬は契約時1000万円、さらに毎年100万円ずつ(5年で)払うので、計1500万円(支払うということ)で話しておいてください』と(満井被告に)言われました」

 《14時58分、林正彦裁判長は10分間の休憩を告げた》
     =(6)に続く

【関連記事】
【共犯尋問ライブ全詳報(1)〜】
満井被告支配の会社社員 満井被告から緒方被告への1億円の流れ証言
【総連事件】地上げ内情知る商社社長が証人出廷 動機の解明なるか
総連事件 「投資家見つかるかは分からないと念押し」 弁護士証言
「破産知っていれば取り引きしなかった」総連幹部が告白

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080826-00000941-san-soci